「上海」 横光利一 (岩波文庫)
二人の日本人青年を中心に、五三〇事件当時の上海を描いた物語です。
新感覚派の集大成的な作品として知られています。
2008年に岩波文庫から改版が出ました。読みやすいし適正価格です。
講談社文芸文庫からも出ていますが、1103円。相変わらず、お高い。
舞台は、1925年の上海。
この混沌とした国際都市には、さまざまな人間が暮らしていました。
風俗の女、踊り子、芸者、没落したロシア女の妾、女スパイ、売春婦、
物乞い、西洋のビジネスマン、インド人の巡査、英兵、米兵・・・
主人公は、日本人青年の参木(さんき)。
若いのに、生きる希望を失っている、あまりぱっとしない男です。
紡績工場に暴徒が襲ってきたとき、参木は一人の女工を助けました。
彼女は美しい支那の女性。名は芳秋蘭(ほうしゅうらん)。
しかし、彼女はもうひとつの顔をもっています。
陰謀、トライキ、暴動、そして市街戦・・・
五三〇事件の中に、芳秋蘭の影が見え隠れして・・・
賛否両論ある作品ですが、予想以上に面白かったです。
私には、ハードボイルド小説のように、楽しめました。
ただし結末はいまひとつ。未完のような印象を与えます。
せめて芳秋蘭がどうなったのか、知りたかったです。
さて、横光利一は、芥川龍之介に勧められて、上海へ渡りました。
そこで、西洋列強に支配されたみじめな東洋を見たのです。
それが、「上海」執筆のきっかけになったのだそうです。
実際、生々しい上海の描写に、このときの体験が生かされています。
横光にはまた、大戦前のパリを舞台とした「旅愁」もあります。
講談社文芸文庫から出ていて、上が1680円、下が1785円!
この値段では、買えません。
さいごに。(引き渡し訓練)
先日、娘の小学校で、引き渡し訓練がありました。
たまたま私の都合がついたので、妻に代わって行って来ました。
教室で娘を引き取って帰るだけなのですが、妙に楽しかったです。
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