『烏賊川市シリーズ』第5弾です。 バカミスながら意表を衝くトリックとからっとした文体で楽しめます。 有坂香織は妹の春佳からの突然の電話を受けます。春佳のアパートに現れた女性を刺し殺してしまったというもの。当の春佳は同様のあまり仙台にいるといいます。アパートに赴いた香織は妹の将来のために死体を遺棄しようと考え、たまたま近くを通りかかった若者・馬場鉄男を巻き込んで死体を楽器ケースに入れて、車に乗せて遺棄場所を探します。 探偵・鵜飼は依頼人を待っているのですが、一向に来る気配がありません。それもそのはず、隣のアパートで死体となっていた女性こそ依頼人だったのです。録音していた電話メッセージをもとに弟子の戸村流平とビルオーナーの二宮朱美と共にペンション・クレセント荘へ向かいます。 車ごと死体を盆蔵山の三日月池に捨てた香織と鉄男は帰りの足がないことに気付き、山中を彷徨った挙句にペンション・クレセント荘に辿り着きます。 やがてペンションのオーナーが不審な死を遂げ…。 ミステリに必要なキャラが揃っているのも、このシリーズの魅力だと思います。推理は切れるもののボケ役で迷惑を省みない探偵の鵜飼と砂川警部、彼らの弟子・部下であるがゆえに巻き添えを食う戸村流平と志木刑事、そしてトンチンカンな迷推理を披露するツッコミ役の朱美。 死体遺棄がバレるんじゃないかとヒヤヒヤする香織と鉄男を翻弄するような彼らの言動も笑えます。 このシリーズにありがちな勘違いや登場人物の思惑といったものが物語を混迷(混乱)に導くのも魅力の一つだと思います。 個人的には鵜飼探偵が電話で依頼を受けるシーンがお気に入りです。電車の中では読まないほうがいいです。
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