『新聞と現代日本語』 金武伸弥 2004/02 著者は読売新聞編集局を経て成城大学短大非常勤講師。 日本語表記の問題についての本。 新聞は原則として常用漢字以外の表外字を使わないという立場だ。しかし誰でも読めそうな漢字が常用漢字表にないのはおかしいとの意見から、日本新聞協会の用語懇談会で表外字(嵐、鍋、虎など)、表外訓(粋「いき」など)がいくつか追加された。 文章には常体(「である」体)と敬体(「です・ます」体)がある。敬体で書けば言文一致となるが、長ったらしいくなるので敬遠されがちである。 「高根の花」は「嶺」が表外字なので「根」に置き換えられた、代用漢字。辞書でも「高根・高嶺」と併記されていて、定着したといえる。一方で、「斑点→班点」や「詭弁→奇弁」のような代用漢字は定着せず、使用しないことになった。 「編集」「活発」「包帯」も代用漢字を使っているが、今では代用だと思わない人がほとんどである。「風光明美」についても、本来の「風光明媚」より意味がよく分かるとして採用する辞書が多い。 「消耗」は正しくは「しょうこう」と読む。しかし誤読された「しょうもう」の方が一般的になり、「しょうこう」では意味が通じなくなった。「他人事」の読みは「ひとごと」だが、「たにんごと」の読みを許容していいのではないかとの意見が増えている。言葉は使う人が多い方が「正解」となり、変わっていく。 「超伝導・超電導」の取り扱いは、新聞各社でまちまちである。日本物理学会では「超伝導」、応用研究では「超電導」というのが一般的だ。 櫻井と桜井、長島と長嶋など、「島」と「嶋」は別の字ではなく、同じ字(異体字)とみなされ、旧字体・異体字は原則として常用漢字に書き改めると用語懇談会で合意されている。「辺」の旧字体「邊」には80以上の異体字があるといわれる。名前だから尊重しろとの意見もあるが、名前は他人も使う公共のものなので、常識的な制限は必要との意見が有力。
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