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380 流行作家殺人事件

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大貫警部シリーズ 第10弾
1999年01月 講談社ノベルス ABCD殺人事件 (講談社ノベルス)
2002年01月 講談社文庫 ABCD殺人事件 (講談社文庫)

「オレ様化する子どもたち」 諏訪哲二 著

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明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。 

年末年始の休みで時間に少し余裕があって、久しぶりに教育関係の本を読みました。
いじめや学校現場を取り巻くニュースやテレビを見ると、何となく違和感があって(子どもに迎合しすぎみたいな)、前から気になっていたこの本を読みました。

オレ様化する子どもたち (中公新書ラクレ)

オレ様化する子どもたち (中公新書ラクレ)

  • 作者: 諏訪 哲二
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2005/03
  • メディア: 新書

著者は「プロ教師の会」代表(2005年発行の時点で)だそうです。
2001年に退職されるまで40年近く現場で子どもたちを見てきた人の意見では80年代に入ってから、子どもが変わったと確信しておられる。

子どもが「オレ様化」し始めたという。「学ぼうとしなくなり」「自分を変えようとしなくなった」
子どもが「生徒」として学校へ来て、まずは「従うべき」という姿勢がなくなって「個」として「この私」が受け入れるか受け入れないかを判断する。
教師と生徒が対等になる。

こういう子ども(生徒)の変化は、著者は教師とのコミュニケーションの点で、「等価交換」という言葉を用いている。
経済が豊かになり、何でもお金で換算することが一般的になる。子どもも「物を買う者」として自立していく。大人と変わらない資格を有するようになって、人と人とのコミュニケーションも共同体的なものから対等なものになっていく。

教師と生徒も共同体的(上下的)から"商品交換"的(水平的)な関係になっていく。
生徒とのそういうやりとりの解説は、説得力があって興味深く読めた。

この本を読むと、現場の(教師の)大変さがよくわかった。
「学ぶ」以前の家庭的なしつけのレベルや地域的な集団生活のやり方においても、再訓練せざるを得ないそうだ。

著者の「個性化」の前に「社会化」が必要、という考えには賛成だ。(でも、バランスも大切だと思う)。
個性はその社会化される過程で浮上してくるもの、というのも前に別のもので読んだことがある。

何でも子どもの欲望や意見を受け入れてきた親たちが、中学、高校受験が視野に入ってくると手の平を返したように、規制を加えようとする、という話に頷けました。(そういうので大人になって適応できなくなり、ひきこもりとかにつながっているのでは?)

後半は6人の教育論者の学校や子ども観についての著者の意見(批判)が書いてあり、いろいろな視点から参考になったり、考えさせられました。(批判しているけど、著者の見方も一面的な感じがあるように思う)。

この本を読んで、学校ではないが、自分の職場のことを思い出しました。
上司が年下というのもあるかもしれませんが、上司が部下に気を遣っているような雰囲気があります。(上司が仕事をしてもらう。部下は"してやっている"みたいな感じの時も)。
こういう雰囲気は初めてで、昔と変わったのか、たまたま自分の職場(部署)だけなのかわかりませんが、違和感を持っていました。


もう1冊借りました。

「教室内(スクール)カースト」   鈴木翔   解説 本田由紀   光文社新書

タイトルに興味を持って読みましたが、内容がなかった。
大学一年生を対象にした「これまでの学校生活の人間関係に関する回顧的調査」として男女5名ずつのインタビューなど、三つの調査が主な内容。

そういうものがあることは否定しないが、インタビューで話している人が少なすぎるし(アンケートも)、内輪の雑談といったものにしか読めませんでした。
得るものがなく、まともに読む気がなくなってしまいました。

特に教師は若手四人の男性だけで、もし、こういう教師に当たったら、不登校とかになる子に同情したくなりました。小学校の年代から、この子はこういう子みたいに決めつけて、教師として指導したり育てたりする気がないような人もいて、子どもがかわいそうになりました。

著者の「学校はそれほど強制されて行くような場所ではなくなっている」という意見(こういうことを書くこと)には危惧を抱きます。

第2章の「ハイパー・メリトクラシー」(「〇〇力」が重視されるようになった社会)で、学校でもそうした能力が重要視され、子どもたちがどの方向へ努力すればいいかわからなくなってしまう、という意見だけ頷けました。

教室内(スクール)カースト (光文社新書)

教室内(スクール)カースト (光文社新書)

  • 作者: 鈴木 翔
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/12/14
  • メディア: 新書

 

 

陽だまりの彼女

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陽だまりの彼女 (新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

  • 作者: 越谷 オサム
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/05/28
  • メディア: 文庫
<裏表紙あらすじ> 幼馴染みと十年ぶりに再会した俺。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、俺には計り知れない過去を抱えているようで――その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる!誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさもすべてつまった完全無欠の恋愛小説。 ぼくが持っている文庫本の帯に 「女子が男子に読んでほしい恋愛小説」 と書いてあります。 「それは、一世一代の恋だった。」とも。こちらの「恋」という字には「うそ」というルビが振られています。 恋愛小説で、ミステリではありません。 解説で瀧井朝世が 「ベタ甘な恋愛小説と思わせておいて、おや、ミステリー要素もあるんだなと興味を掻き立て、途中からは悲恋もの? と不安にさせながら、最終的にはファンタジーでもあったのだと発見させる」 と書いていますが、ミステリー要素は薄いので、そういう期待はせず、恋愛小説として読まれるのが吉だと思います。むしろ、ミステリー要素を期待することは、鑑賞の妨げとなります。 どうして妨げとなるのか、書いておきます。 俺:奥田浩介は、彼女:真緒と無事 (?) 結婚します。物語のかなり最初の方です。 交際を報告するときに、彼女の父親から反対されます。 その際、単なる里子というわけではなく、真緒の記憶に関する秘密を打ち明けられます。 父親からは「人様に迷惑をかけられないよ」とも言われます。 結婚してからも「真緒が君に迷惑をかけると思うけど、許してやってくれるかな?」と重ねて言われます。 こういう言い方をするということは、浩介には教えていない、更なる秘密があるんだろうな、と思います。その秘密のせいで浩介は迷惑をこうむるんだろうし、その秘密がラストで明かされるんだろうな、と考えながら読み進んでいきます。 で、ラストの種明かし、びっくりするとは思いますが、父親には知りえないパターンの秘密なんですね。ファンタジックな仕掛けなので、通常の人間では推察しえないタイプの秘密です。 で、そのラストはファンタジーになります。これがミステリー的には肩すかしでアウトという人もいるかも。個人的にはファンタジーは構わないんです。その意味では、このラスト、個人的にはOKなんです。 でも、この父親のシーンが、ひっかかって、ひっかかって。釈然としなかったですね。 真緒の両親は物語上必要な人物なんですが(ラストシーンは印象的です)、ここまでの父親の反対がなくても、ちゃんと成立するんです。このシーンがなくても、ちゃんと物語はうまく進んでいくんです。余計なシーンだと思います。 もちろん、父親が知っていた限りの秘密=浩介に父親から話した秘密からだけでも、父親が想像し、真緒には何が起こるかわからないから、浩介に迷惑をかける可能性があるだろう、と勝手に先回りして言ってしまうことはあるとは思いますが、小説でそれをやってはいけません。 ミステリ好きはとかくこういうことを考えて読んじゃうので、これは大きなマイナスです。あまり先の展開とか考えないで読んだ方がよいタイプの作品ですね。 さて、ミステリを忘れて... 幼馴染みと再開してはぐぐむ恋、って、これだけでなんかよさげですよね。 このベタ甘な恋愛小説部分、よかったです。 楽しい恋愛を読んでいく楽しみもあるんですが、ラストの真緒の秘密を知ってから振り返ると、さりげない楽しいやりとりが深~いものに思えてくる、思いの深さを想像するとなんだかたまらないですね。 「女子が男子に読んでほしい恋愛小説」なのかどうかはともかくとして、読み返してみようかな、二度読みしてみようかな、と思わせる、ひねった恋愛小説で、楽しめると思います。

再開、余計なお世話ではありません。

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「武器としての書く技術」(イケダハヤト)を読む どこからこの本にたどり着いたのかは、よく覚えていないけれども、アマゾンの中を徘徊中に目にとまって注文してみた。 多分、もっと銭儲けにギラギラした内容も予想していたけれどそうではなかった。 目次に目を通して、一気に最後まで読みすすめた。 稼ぐことは副次的なことにさえ思えた。ボルグが開く可能性について目が見開かれる思いがした。 ビジネスとしてはもちろん、ブログからつながる人間関係の可能性、そしてさらには個人の救済装置として、効力を発揮する可能性を秘めた本だと思えた。 そこに感応して、改めてブログに文章をアップしてみた。 新しい展開を期待して。 1時間に1万字の生産能力を獲得するのは並大抵のことではないと思える。15分で1本のブログを書き上げるところもなかなかそうはいかない。けれども、これは、この本に書かれていたように訓練し継続していくことによってしか達成できないのだからそうするしかないのだろう。 月にブロクで50万円を稼ぐのはこの本に書かれているように並大抵のことではない。 むしろ、稼ぐ武器としてのブログや文章作成ではなく、新しい仕事のあり方、経済関係、人間としての自由の獲得といったテーマが根底にあって、ビジネスノウハウの本ではなかくて、むしろ哲学に関わる書籍となっている。 「と思う」「と感じる」「と考える」という語尾も排除した。 まずは書く事、書き続けること。それが大事で、アクセスを集めることや収入につなげることは後回しでも良い。 そうして、1年以上放置していたこのブログを再開した。 『途切れたら再開すればいいのです。続けるための方法は「再開すること」。』p.149 『書くことに迷っていたら、まずこの本の感想を「書く」ことから始めてみてはどうでしょうか?余計なお世話かもしれませんが。』p.270 いいえ、余計なお世話ではありません。

NOVA4 書き下ろし日本SFコレクション

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気がついたらずいぶん髪が伸びていたので床屋へ行った。
で、帰ってきたら、突然くしゃみが出てきて、
さらに鼻水が止まらなくなってしまった。
どうやら風邪を引いてしまったらしい。
正月休みももう終わろうというのに大丈夫なんだろうか、私。


 


NOVA 4---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

NOVA 4---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

  • 作者: 北野 勇作
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/05/07
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

書き下ろしの短編SFのアンソロジー、第4弾。

今回は9編入っているんだけど、今ひとつ好みに合うものが少なかったかなあ。

面白かったベスト3は以下の通り(目次順)

「ドリフター」(斉藤直子)
 学校の守衛のおじさんと、学生の "僕" が見つけた古い官報の束。
 ここから始まる、ユーモラスな会話が楽しいコメディ。
 ラストはちょっぴりしんみり、かと思うと・・・
  この人、面白いなあ。もっと書いて欲しいなあ。

「マッドサイエンティストへの手紙」(森深紅)
 ヒロイン・円(まどか)が社外へ向けて発送した封筒が、
 なぜか社内の研究棟へ届いてしまい、それが縁で円は
 一風変わった研究者である "ドクター" 葉加瀬 と知り合う。
 折しも、厳重なセキュリティに守られた社内の敷地から
  一人の社員が姿を消す。
 この "密室状態からの人間消失" に、円と "ドクター" 葉加瀬が挑む。
 「探偵ガリレオ」よりはちょっぴり近未来を舞台にしたSFミステリ。
 消失トリック自体はあまりスゴイとは思わないけど、
 円と "ドクター" 葉加瀬(と "宇佐見ちゃん")のキャラがいいなあ。
  もっとこの二人の話が読みたいって思わせる。
 ぜひシリーズ化してほしいなあ。

「警視庁吸血犯罪捜査班」(林譲治)
 10万人の吸血鬼(!)を "移民" として東京に受け入れ、
 その労働力を活用している近未来の日本。まず、この設定がすごいね。
 その吸血鬼の引き起こす犯罪を専門に取り扱うために設置された
 警視庁吸血犯罪捜査班の活躍を描くSFミステリ。
 吸血鬼が犯人と思われる連続通り魔殺人事件が起こる。
 犯人の動機が意表を突くもので、この作品における吸血鬼の設定とも
 密接に結びついていて、そこは良く出来てると思う。
 でもシリーズ化は・・・しなくてもいいかなぁ。

他の作品についても一言。

「最后の祖父」(京極夏彦)は、昔よくこんな感じの話を読んだような気がする。
「社員食堂の恐怖」(北野勇作)はユーモア・ホラーかな。
 (そんなジャンルがあるのか知らんが)

「瑠璃と紅玉の女王」(竹本健治)はSFではないと思う。
「赤い森」(森田季節)も、SF成分はかなり低め。

「宇宙以前」(最果タヒ)は、よくわかりませんでした。
「バットランド」(山田正紀)も、「宇宙以前」ほどではないけど
よく分からなかった。せっかくの山田正紀の新作なのに。何だか残念。

森博嗣「喜嶋先生の静かな世界」を読みました

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今年は積読本をなんとか消化したいと、お正月から精力的に

読むぞ!と思っていたのですが、なんだかんだで思うように

はかどりません。

まぁ、マイペースで行くことにします。

年またぎでお正月読破した本の1冊目はこちらです。

喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)

喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/10/16
  • メディア: 文庫



某大学の先生ながら推理小説作家である森博嗣さんの

自伝的小説です。まったくミステリー風味なし。

主人公は、卒論を控えた工学部の4年生。

配属されたのが喜嶋先生の研究室で、その後の主人公の

人生に多大なる影響を及ぼしたのが喜嶋先生と研究室の人たち。

主人公は大学院へ進学し、研究生活を続けるのですが、その大学

での研究生活の描写がすごく面白いです。

喜嶋先生やほかの大学の先生の言動や行動もいろいろな意味で

興味深い。

時代の設定が少し前なので(たぶん森さんが学生の頃ですよね)

なんとなく時間の流れ方がゆっくりした感じに思えます。

喜嶋先生が実在したらぜひお話してみたいです

☆1冊目☆

 

 

 

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戦国の軍隊がわかる好著

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西股総生『戦国の軍隊----現代軍事学から見た戦国大名の軍勢』 この本は戦国時代の軍隊について書かれた本である。はっきり言って、この種の本は専門書も含めてほとんど無かったのではないか。戦国時代という歴史の研究と軍隊という軍事の研究の狭間にある分野で、従来は戦国史の歴史研究家が、その論説(や著書)の中で、かなり想像で各大名の軍隊を想像し、それを基に歴史を研究していた感がある。  しかし、本書を一読すると、それまで抱いていた戦国の軍隊のイメージが一新されることは間違いない。大河ドラマファンならずとも、戦国時代に興味がある人にはぜひ一読して欲しい名著と思う。    戦国時代の戦闘で、まず普通に考えるのはこんな場面であろう。    「鉄砲隊! 放て!」  「弓隊、前へ。射かけよ!」  「槍隊! 前へ! 押し出せ!」  「騎馬隊、用意はいいか!」    ところが、歴史研究家からは、当時は封建制であり、土地の領主の各小領主がそれぞれ領土から軍勢を引き連れてくるので、各領主ごとにばらばらの単位となっているから、上のような号令が全軍で行われることはありえない、と言う。  例えば小領主ならせいぜい50人くらいの部隊を率い、その中では鉄砲隊と言っても鉄砲は2挺くらい、弓も10人いなくて、槍隊が30人くらい。馬に乗っているのは上士なので、上士(指揮官)だけで騎馬隊を編成するなどとんでもない。馬に乗っている指揮官はそれぞれ自分の部隊の槍隊、弓隊に声をかけて指揮している・・・・。槍隊の突撃と言っても、それぞれの小領主が自分の部隊に声をかけているだけなので、10人、20人程度の小規模な槍隊がそれぞれ個別に突撃している・・・・    軍事について常識のある人なら、そんなバカなと思える状況だが、今まで歴史家は封建制の小領主の集まりが封建時代である戦国時代の軍隊と固く信じていたので、上のようなイメージで戦いを捉えていて、数千人の槍隊が穂先を揃えて前進など、ありえないと主張していた。例えば古代ローマの軍隊など、紀元前だが、すでに数万規模で全軍統一した兵科別編成になっていたのに、その2000年も後の時代に、兵科別編成がないなど、そんなバカな、と言いたくなる。そういう疑問に対し、歴史研究者はお前は素人だから封建時代の基礎がわかってない、とせせら笑う。  この本は、そうした素朴な疑問を真っ正面から検討し、戦国時代当時の1次文献を中心に、戦国の軍隊の実情に迫った本なのである。    この本が基礎とするのは、以下の3つの文献である。  ・『渡辺水庵覚書』 秀吉の小田原攻めの際に山中城攻めに参加した、        中村一氏隊の渡辺勘兵衛という中級程度の家臣による覚書  ・『北条氏所領役帳』 北条氏康の時代の北条氏の所領の表  ・『北条家着到定書』 北条氏政時代の北条氏の軍役の表    『渡辺水庵覚書』によれば、中規模の家臣で、主君一氏にも直言できる身分の渡辺勘兵衛が、覚書を読む限り、自分の部隊を率いておらず、仲間の(同程度の身分の)武者と共に、ほぼ単独行動で山中城攻めをしていると思われる。これからそれぞれの小領主が率いてきた部隊は、領主とは切り離されて編成されていたことが示唆される。    次に、『北条氏所領役帳』によると、後北条氏の各城に詰めていた部隊を構成しているメンバーは、それぞれの城の周囲に所領を持つ土豪などではなく、例えば北関東の城に、伊豆半島に所領を持つ武士が詰めているという具合で、どうやら北条氏中央の人事で、配属されているだけに見えること。これでは各武士が自分の所領から兵を募って部隊を編成しているとは思えないことになる。  これを一歩進め、各武士が連れてきている兵力は、いわば足軽中心で、金銭で雇用した兵士という考察になる。足軽とは陣笠を被って槍を持つ歩兵というのは後世の偏見で、当時の用語でいう足軽は、今日の言葉で言えば非正規雇用、それに対して代々の家臣は正規雇用社員に相当する。    最後に、『北条家着到定書』である。これは戦いで動員されるときに家臣にそれぞれ要求されていた軍勢の内容である。あんたは100人くらいを、とかいうドンブリ勘定ではなく、かなり細かい。例えば天正5年の後北条氏の岩付衆(岩付城に入っている軍団)の場合は、全部で1580人だが、以下のように定められている。  ・小旗 120本 奉行3人  ・槍 600 奉行5人  ・鉄砲 50余 奉行2人  ・弓 40余 奉行2人  ・歩者250余 奉行3人  ・馬上 500余騎 奉行6人  ・歩走 20 奉行1人 これから、まず馬上500余騎で全部で1580人なら、馬に乗る武士はとてもではないが指揮官だけではない。これだけで、ある種騎兵隊になるであろう。また、それとほぼ同規模の槍隊が定められているのもわかる。  このうち、常時訓練が必要なのは、鉄砲、弓、そして馬上の一部だろう。なので、他は非正規雇用、つまり金銭で雇って戦場に連れてきていたというのが、この本での重要な主張である。この割合等は、武田氏、上杉氏でもあまり変わりない。つまり、この1580人の半分以上はその場その場で金銭で雇われた非正規雇用の兵である。そして、着到定書で求められているのは、日頃この人数を抱えていることではなく、戦場へ行くときはこれだけ連れて来い、つまり、非正規雇用の兵を雇ってこの人数にして連れて来い、ということなのだ。    そして実際の戦場では、この着到定書の通りに連れてきた軍勢は、指揮官とは切り離されて、それぞれ馬上の500騎は騎馬部隊に、槍の600人は槍隊に、とそれぞれ編成され、別に決められた騎馬部隊の指揮官、槍隊の指揮官の指揮下に入る、ということなのだ。つまり封建制とはいいつつも、すでにその土地から徴募して農兵を使ってるわけではなく、非常勤雇用とはいえ、戦場を渡り歩くような者たちで戦国の軍勢は構成されていた、ということだ。    この本では触れてないが、この主張を読んで思い出すのが、関ヶ原の時の徳川家康直轄の3万5千余の軍勢である。この軍勢の中身は小身の武士ばかりで、大身の本多平八郎などは秀忠の軍勢にいて信州の真田攻めでひっかかっており、関ヶ原に来ていない。小身ばかりの軍勢がそれぞれの小領主ごとに戦っていたら戦いにならないと思うのだが、実際の徳川兵団は関ヶ原で立派に戦っている。この事実も、この本の言う、戦国の軍隊は兵科別編成になっていたという主張を裏付けるこのと思う。    戦国の軍隊について、新しい見方を教えられ、納得出来る本で、ぜひ一読をお勧めしたい。
戦国の軍隊: 現代軍事学から見た戦国大名の軍勢

戦国の軍隊: 現代軍事学から見た戦国大名の軍勢

  • 作者: 西股 総生
  • 出版社/メーカー: 学研パブリッシング
  • 発売日: 2012/03/19
  • メディア: 単行本
「城取り」の軍事学

「城取り」の軍事学

  • 作者: 西股 総生
  • 出版社/メーカー: 学研パブリッシング
  • 発売日: 2013/04/30
  • メディア: 単行本

土鍋

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「銀峯三島 8号深鍋」  銀峯陶器製

  しばらく前に長いこと使っていた土鍋が底にひびが入って割れてしまった。土鍋はやっぱりあった方がいいねということで、ホームセンターに行ったついでに買ってきたのがこれ。四日市萬古焼、ちょっと調べてみたら陶器と磁器の間の性質をもつ「半磁器」なのだそうだ。耐熱性に優れた萬古焼は四日市の代表的な地場産業で、土鍋のシェアは7~8割にもなるとか。大事に使っていきたいと思う。まずはそうおでんがいいかな。 

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2013年12月の読果

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あけおめ・ことよろ。 なんて雑な年初の挨拶なのでしょうか。 ま、省略って割と好きなので、TPOさえ合えばよいと思ってます。 今年は、 ・月間20冊ペースを保つ。 ・もっと図書館を有効活用する。 が目標ですかね。 先月も、読めました。 http://booklog.jp/users/masahi-6 「叫びと祈り」 異国情緒たっぷりな推理と、ラストにやられました。 叫びと祈り (創元推理文庫) 「下町ロケット」 ”半澤直樹”的テイストで、頑張れ働く人々よ、です。 下町ロケット (小学館文庫) 「さよなら妖精」 青春と推理と切なさの配合がたまりません。 さよなら妖精 (創元推理文庫) で、今月のイチオシは 『攪乱者』石持浅海 攪乱者 (実業之日本社文庫) 善良な市民の振りしたテロリスト達の活躍。 「スーパーにレモンをおく」「コンビニの自動ドアを故障させる」 なんて、テロとは無関係そうな行為が、緻密な推理の結果、 政府にダメージを与える恐ろしい企みに・・・ 名作タイトルになぞった短編連作。 徐々に加速する勢いが良いです。 こんな最後になるなんて。 章名から内容を推測するのもまた一興。 でも、最後まで読んだ後、すっかり一般名詞になった「テロ」について ちょっと冷ややかに考えさせられるものがありました。

脳科学を勉強しませんか?

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人の脳は不思議なもので私達の行動は そのほとんどが無意識の内に決定されています。 実際、朝起きて、必死に考えてから 服を着て会社に行くという人はいないでしょう。 行動の95%は無意識に支配されているのです。 この95%の無意識の力を広告・販売戦術に 活用することはできないのか? そう考えたのが、人気ブログ 「Neuromarketing(ニューロマーケティング)」 の執筆者、ロジャー・ドゥーリーです。 彼はカタログ販売のマーケターとして 頭角を現す一方、脳科学に興味を持ち、 最新の脳科学をマーケティングに応用した 「ニューロマーケティング」を研究。 この分野の第一人者となりました。 そして、このニューロマーケティングの 数々の研究結果をまとめたのが、この本 脳科学マーケティング 100の心理技術です。 価格が脳に与える影響やケチな人に売る方法 男性脳、女性脳の攻略法、などなど、 心理学や行動科学を元にした 大変興味深い心理テクニックが満載です。 非常にオススメの本なので 今すぐチェックしてみてください。 ↓ 脳科学マーケティング 100の心理技術

中谷彰宏さんのスピード決断力のレビュー

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中谷彰宏さんのスピード決断力のレビューです。 この私のばバイブルです。私の中で一番の本があります。 それは中谷彰宏さんのスピード決断力です。 私がこの本と出会ったのがたしか20歳の時です。 この時はめちゃくちゃ悩んでました。 この本のおかげで決断力ができました。 決断することによって 自分の人生の扉を開けると思うのです。 いい本です。とにかくこの本のいいたいことは 今すぐ決断しましょうということ 私はこの本の25ページからのことが一番好きなのです。 現に中谷彰宏さんのセミナーに行ったときに サイン会があった時にサインしてもらったのです。 他にもいい本があったのですが この本にサインしてもらいました。 もし決断力に興味がある方は読みましょう。 私が読んだ本のレビューのアドレスは 小玉歩さんや神田昌典さんや 中谷彰宏さんの本があります。 こちらをクリック http://charimakeigo.blog.so-net.ne.jp/archive/c2304545005-1 私が書いたサッカーの記事についての 記事は私が監督ならの記事があります。 こちらをクリック http://charimakeigo.blog.so-net.ne.jp/archive/c2304284320-1

【書評】ジェフリーアーチャー『十二の意外な結末』

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ジェフリーアーチャー2冊目の短編集です。
十二の意外な結末 (新潮文庫)

十二の意外な結末 (新潮文庫)

  • 作者: ジェフリー・アーチャー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1988/09
  • メディア: 文庫
さて、内容ですが、第1作『十二本の毒矢』より、本作の方が全体的に楽しめました。 訳者のオススメは『本物じゃない』と解説(訳者が解説を執筆)にありましたが、ぼくのオススメは『クリスティーナ・ローゼンタール』でしょうか。書簡体で、基本的にベーシックな恋愛物で、両親の反対といった障害も定番ですが、最後の2行がとてもいい味を出しています。 それとお色気ですが『チェックメイト』も好きです。これ、将棋でも同じ作品が書けそうだと思ったり。 ジェフリーアーチャーの短編は、最後の1行、2行で落とすのが上手いと思います。 いろいろな味があるので、全ての作品で満足はできなくても、1つ2つは感性に合う作品が見つかる。 そのような短編集だと思いました。

苦しみのあとに (アン・メイザー) R-0185

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R-0185-a.JPGR-0185-b.JPG ハーレクイン・ロマンス R185 著者     アン・メイザー 訳      天野 恵 発売日   昭和57年7月20日 ページ数  156ページ ISBN    4833501856 内容    エグレモント・ホテルのロビーで、ローラはそわそわしていた。        家庭教師の面接を受けに来たのだが、だんだん落ち着かなくなる。        だいたい、ここに来たこと自体、妙な話なのだ。        職を探しているのではない。 今の仕事に何一つ不満はなかった。        そこにタイム紙の求人広告。 めったにない名前------        セニョーラ・マドラレーナとは、あのマドラレーナでは?        そう思うと、前後の見境なく、電話をかけてしまったのだ。        いよいよ面接の時が来た。 現れたのは、小柄な老婦人だった。        いけない! どうやら見当違いをしてしまったらしい。        この人は、ラファエロの奥さんなんかじゃないようだ・・・・・・。 Amazonの紹介ページです。
苦しみのあとに (ハーレクイン・ロマンス (R185))

苦しみのあとに (ハーレクイン・ロマンス (R185))

  • 作者: アン・メイザー
  • 出版社/メーカー: ハーレクイン・エンタープライズ日本支社
  • 発売日: 1982/07
  • メディア: 新書

宮大工、小川三夫さんの言葉に出会えてよかった!

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久々に、天理に足を運びました。 近鉄日本橋、9:52発の臨時急行、天理行きに乗車しました。 しかし…菖蒲池駅構内にて人身事故発生(9:29頃)とのアナウンスが… 東生駒駅~近鉄奈良駅間が運転見合わせとのことで、急遽、大阪線経由(布施~大和八木~平端~天理)に路線変更しました。 11;00頃に天理到着予定でしたが、約30分遅れました。 天理大の同級生と一緒に、約15年ぶり!に「お節会」に行かせて頂き、お雑煮をたくさんご馳走になりました。 Mさん、ありがとうございました。 帰りは三島、川原城アーケード内を歩きました。 140105_天理カレー.JPG レトルトのカレー(※参考HP http://doyusha.net/SHOP/201010800002.html)です。まさか!書店(道友社)が、カレーのルーを販売するとは思いもしませんでした。 130105_すきっと22号.JPG 天理カレー以上に、興味を引いたのが、すきっとVol22です。 道友社のブースを何気なく歩いていると、すきっとの表紙に気になる写真があり、よくよく見てみると、宮大工、小川三夫さんが設立された「鵤工舎」さんのスタッフの集合写真でした。 すぐに購入しました。 久々に小川三夫さんの言葉に出会えて、感激しました。 「不器用の一心」 時間をかけてでも、一つ気づくことが、十も百にも一気に開くことを、大切にしたいです。
すきっと vol.22 特集:つなぐ

すきっと vol.22 特集:つなぐ

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 天理教道友社
  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: 大型本

ポーカー・フェース(☆☆☆☆)

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ポーカー・フェース

ポーカー・フェース

  • 作者: 沢木 耕太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/10
  • メディア: 単行本

 

 

 

硬派のエッセイ、文章の構成力。

上っ面だけの言葉だけじゃない、よく練りこんだ文章。

やっぱり、沢木さんはいいです。

13このエッセイがストレートに響く。しびれるねー!

「春にはならない」(p139) 

物事のウソ、ホント、ネットの本質をよくついてます。 ものを書く人は必見でしょう、やっぱり。

(Vol.1183 25-Oct-2012)


見仏記 ぶらり旅篇 (☆☆☆☆)

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見仏記 ぶらり旅篇

見仏記 ぶらり旅篇

  • 作者: いとう せいこう
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/11/01
  • メディア: 単行本

これが何冊目か わからないが、「仏像をみること」が最初はどちらかというと物見だったのが、

だんだんと本質というかコアを見通すような感じになってきた気が”ところどころ”します。

京都と奈良というターゲットがそうさせるのか、たまたまかわかりませんがねー。

でも、面白いです、この2人の掛け合いは。(現代の弥次喜多道中かぁ・・・)

(Vol.1184 6-Nov-2012)

インダス文明の謎 古代文明神話を見直す

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インダス文明の謎: 古代文明神話を見直す (学術選書)

長田俊樹/著
出版社名 : 京都大学学術出版会(学術選書 064)
出版年月 : 2013年10月
ISBNコード : 978-4-87698-864-8
税込価格 : 1,890円
頁数・縦 : 21,323p・19cm


 インダス文明の概説書。筆者はもともと言語学者であるが、総合地球環境学研究所の教授時代の2004年にインダス文明に関するプロジェクトを発足させ、8年間にわたり、二つのインダス文明遺跡の発掘とインダス文明遺跡地域の環境調査を実施した。その結果と、文献から得た最新情報を提供してくれる。

【目次】
第1章 インダス文明とはなにか
第2章 モヘンジョダロ遺跡とハラッパー遺跡―インダス文明に関する神話
第3章 パキスタンの砂漠地帯に広がるインダス遺跡―涸れた川とインダス文明
第4章 ガッガル川流域を踏査する―はたしてサラスヴァティー川は大河だったのか
第5章 ドーラーヴィーラー遺跡―乾燥した「水の要塞都市」
第6章 カッチ県とその周辺の遺跡―海岸沿いのインダス文明遺跡と流通
第7章 新しいインダス文明像を求めて

【著者】
長田 俊樹 (オサダ トシキ)
 総合地球環境学研究所名誉教授及び客員教授。神戸市生まれ。北海道大学文学部卒。インド・ラーンチー大学博士課程修了(Ph.D.)。国際日本文化研究センター助手、京都造形芸術大学教授を経て、2003年10月から2012年9月まで総合地球環境学研究所教授。専門は、言語学。

【抜書】
●インダス文明の年代(p14)
 盛期ハラッパー文化、つまり狭義のインダス文明の年代……BC2600~BC1900。

●五大都市(p15)
 インダス文明の五大都市。
  ハラッパー遺跡……インダス川支流のラーヴィー川沿い。パキスタン領。
  モヘンジョダロ遺跡……インダス川本流沿い。パキスタン領。
  ガンウェリワーラー遺跡……チョーリスターン砂漠。パキスタン領。
  ラーキーガリー遺跡……ガッガル川沿い。インド・ハリヤーナー州。
  ドーラーヴィーラー遺跡……カッチ湿原。インド・グジャラート州。

●インダス文明4地域(p20)
 インダス文明遺跡が集中する4地域。
 (1)インダス平原……ハラッパー、モヘンジョダロ。インダス川流域の地域。
 (2)ガッガル=ハークラー川流域……ガンウェリワーラー、ラーキーガリー。現在は両川とも干上がり、チョーリスターン砂漠が広がる。ヴェーダ文献に謳われるサラスヴァティー川と比定されている。
 (3)グジャラート州カッチ県とその周辺……ドーラーヴィーラー。カッチ湿原、アラビア海に面した遺跡群。カッチ湿原は、かつては海だった? インダス文明の時代には2mほど海面が高かった。
 (4)マクラーン海岸……大都市遺跡は報告されていないが、海洋貿易の拠点と考えられる。ここも、かつては9mほど海水面が高かった。

●ハラッパーとモヘンジョダロ(p38)
 ハラッパー遺跡とモヘンジョダロ遺跡は、まだ発掘が終わっていない。
 ハラッパーは広大なため、あと100年続けても発掘が終わらない(ウィスコンシン大学ケノイヤー教授の弁)。
 モヘンジョダロは、インダス川のダムができたため、地下水が上昇し、発掘された部分が塩害で侵され、保存作業がメインとなって新たな発掘が行えない状況にある。

●ウルドゥー語(p50)
 インドのヒンディー語と、パキスタンのウルドゥー語(インドでも公用語のひとつ)は、口語レベルではほとんど変わらない。
 文字は、ヒンディー語はデーヴァーナーガリー文字、ウルドゥー語はペルシア・アラビア文字。

●大河文明(p254)
 大河文明の要件……①大河に依存している。「ナイルの水が溢れ出て潤す限りの土地がエジプトであり、(中略)この河の水を飲むものはすべてエジプト人である」(ヘロドトス『歴史』pp.172-3)。②文明を支える農業が大河に依拠している。③中央集権的統治システム。
 インダス文明は、大河文明ではない。

●夏作、冬作(p261)
 夏作(カリーフ)……6月半ば~9月半ばのモンスーンの雨に支えられた作物。イネ、雑穀類(モロコシ、アワ、キビ、シコクビエ)、豆類のリョクトウとケツルアズキ、ゴマ、ワタ。
 冬作(ラビ)……灌漑による冬季の作物。オオムギ、コムギ、豆類のエンドウとレンズマメとヒヨコマメ。
 インダス文明も、地域によって夏作と冬作が行われていた。
 シンド州(モヘンジョダロ)……冬作物が75%以上。大麦と小麦だけで50%以上。灌漑を利用した農業。
 パンジャーブ州(ハラッパー)……冬作物60%。大麦と小麦は25%。レンズマメ、エンドウが多かった。夏冬混合地帯。
 グジャラート州(ドーラーヴィーラー)……冬作物40%、夏作物60%。小麦と大麦は10%ほど。イネ、キビ、アワで40%。モンスーンを利用した夏作農業。

●インダス文明の統治システム(p266)
 インダス文明の共通点……インダス印章、インダス文字、上下水道の整った都市。
 インダス文明には、エジプト文明におけるピラミッド、メソポタミア文明におけるジッグラドといった王墓や記念碑的建造物がない。文明全体の権力者を推測する決定的な遺物が見つかっていない。
 ジェーファー、1982年、「世襲のエリート、中央集権的政府(国家、帝国)、戦争に基づく社会組織とは結びつかないで、技術的に進んだ、都市機能をもった、文字をもった文化を達成させた」。

●流動性と遊牧民(p274)
 〔かなり小さな遺跡も多かったが、とくに小規模の遺跡はキャンプサイトだったのではないかと指摘した。つまり、砂漠を移動する民が、キャンプサイトを転々としながら、鉱物資源、あるいはグジャラート産の工芸品を大都市に運んでいたという構図が浮かび上がる。こうした砂漠の民は基本的に牧畜を生業とする遊牧民であっただろう。彼らとともに、牛や山羊も移動する。家畜に荷物を積んで運んだことになる。
 また、牛車がインダス文明期からあったことは、遺跡から牛車を模したミニチュアが多数発見されていることから明らかである。モヘンジョダロ遺跡の博物館にも、ミニチュアは飾られていたし、ファルマー遺跡でも、ミニチュアの車輪などが発見されている。こうしたミニチュアは設計図の役割を果たしていたのかもしれない。さらに、タブレット型印章のなかには船を描いたものがあり、船も輸送の重要な手段である。
 もう一つ、運搬の手段としてロバがある。第6章のカーンメール遺跡のところで紹介したように、野生のインドノロバが描かれた印章が発掘されている。そのカッチ県ではインドノロバと家畜化されているアフリカノロバを掛け合わせた種間雑種ロバが生産されているが、この伝統がインダス文明期からあったとしたら、強くて早い種間雑種ロバが運送の役目を担っていたのかもしれない。いずれにせよ、牛やロバを飼育していた人々、つまり遊牧民がインダス文明の流通ネットワークを支えていたことはまちがいない。〕

(2014/1/5)KG

〈この本の詳細〉
honto: http://honto.jp/netstore/pd-book_25913702.html
e-hon: http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032992384

「なぜ会社は変われないのか」

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なぜ会社は変われないのか―危機突破の風土改革ドラマ (日経ビジネス人文庫)

なぜ会社は変われないのか―危機突破の風土改革ドラマ (日経ビジネス人文庫)

  • 作者: 柴田 昌治
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2003/11
  • メディア: 文庫
近年、全く書評をしてませんでしたが、目標達成のためにも 今年は読んだ本をUPしてゆきたいと思います。 本年1冊目は、本日、名古屋へもどる高速バスの中で、ビジネススクール で紹介された本書を読みましたので、そちらの紹介から... (なにせ6時間もかかりましたので...) ビジネススクールでは企業文化について学習しましたが、本書は その悪い企業文化を変革する物語です。 どんな会社にも有形無形(無形の方が圧倒的でしょうが)の企業文化 があるはずですが、往々にして古き良き日本の会社は、過去の成功体験 に根差した、今の時代にはマッチしない企業文化がはびこって、変化の 早い現在の環境適用には足かせになっていると思います。 この企業文化をどのように変えて、今の時代にマッチした新しい文化へ 変革してゆくのかが、本書の主題ですが、実話に基づいたフィクションと 言うだけあって、「なるほど!」とうなずける部分と、「これは出来すぎでしょ!」 と突っ込みを入れたくなる部分とが混在しております。 私としては、本書内でたびたび登場する「まじめな雑談」や「オフサイトミーティング」 など、早速試してみたい内容でありましたが、「一人で決めるマネジメント」などは 使い方によっては滅茶苦茶になりそうなマネジメント手法だと思いましたので、すべてが すぐに役立つ内容とは思えませんでしたが、管理職であれば読んでおいて損はない内容 であるには違いないと思います。 ビジネススクールでも学びましたが、学びはあくまでも学びであって、実践で使えないと 何にも意味のないことですので、本書の気づきも是非とも実践で活用させていたきたいと 思います。 何はともあれ、明日は2014年の仕事始め! 今年は各種学びを実践する年にします!

Der Begriff vom Entstehen ist uns ganz und gar versagt; ...

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599. Der Begriff vom Entstehen ist uns ganz und gar versagt; daher wir, wenn wir etwas werden sehen, denken, daß es schon dagewesen sei. Deshalb das System der Einschachtelung uns begreiflich vorkommt. (Johann Wolfgang von Goethe) 我々は発生という考えにまったく手を出せない。それゆえに、何かが生じるのを見ると、それはすでにそこにあったものと考える。つまり、前成説の体系が理解しやすいものに思われるのである。(ヨーハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ) ※前成説とは、生物がミニチュアの形で種や卵の中に入っていると考える説。

381 怪盗の有給休暇

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