アルゼンチンの作曲家、マウリシオ・カーゲル(Mauricio Kagel、1931年- 2008年)の楽曲「ティンパ二協奏曲」がネット上で話題になっている。オーケストラ演奏のラストでティンパ二が盛り上げ、最後の一音で打楽器奏者が頭からティンパ二の中にのめり込んでしまう。
まるでコントなのだけれども、この作曲家はほかにも指揮者が途中で倒れてしまう、全編ベートーヴェンの楽曲で構成されているなど、ユニークな曲ばかりを作った。ピアノの前に座ってまったく音を出さない「無音」という楽曲もあるうらいだから、現代アートとしてはなんでもアリなのだが……。
この作曲家にインスパイアされた音楽家がいた。
円尻カゲルは、モダンミュージックを目指していた。アートというかパフォーマンスに近い音楽を作りたかったのだ。カーゲルの作品に大きく影響を受け、全編レディ・ガガの曲で綴った交響曲も作ったが、ただのパクリもしくはカヴァーじゃないかと揶揄された。お化けの格好をしてゴーストライターもやってみたが、取引相手の佐村鬼河原守が嘘つきだったので頓挫した。そこでいまは派手で面白いパフォーマンス楽曲を地道に作っている最中だ。その一部を披露してみると……
チャイコフスキーも「序曲1812」で大砲を鳴らしたのだが、カゲルは「序曲20010911」の譜面 では、オーケストラの真ん中に一対の塔をしつらえ、クライマックスで飛行機の模型を飛びこませて破壊するように指示が書き込まれている。
交響詩「仁義」では、楽曲の中盤で着流し姿の男たちが拳銃や刀を持って楽員に襲いかかるとなっている。
幻想曲「河童場所」では、クライマックスでマジシャンが現れてオーケストラを丸ごと消してしまうし、小品「アベノ混ぜ」ではソリストに安倍首相を迎えて全編演説が続く背景でオーケストラが演奏するように指示されている。
そんなユニークな楽曲の中でもこれは演奏不可能だろうと囁かれているのが、『来訪」という交響曲だ。厳かな序奏にはじまり、電子音や映画「未知との遭遇」のモチーフを絡めながらエンディングに向かっていくのだが、中盤では矢追純一と大槻教授が登場して激論を交わし、クライマックスではオーケストラの真ん中に台座がせり上がってきてUFOを召喚するというのだ。この演奏はUFOが来訪するまで終わることができない。だから演奏不可能なのだ。
これらの楽曲はとある場所で密かに公表され一部が披露されたが、聴衆はほとんど来場せず、未だ話題にも上っていない。我々が耳や目にするためには彼が自ら演奏してユーチューブ等にアップするのを待つしかないようだ。
了
↓このアイコンをクリックしてくれると、とてもウレシイm(_ _)m