ああ、これが
怪人二十面相
「万葉語誌」
万葉集の重要語150を選び、その語義を解説するいわば読む辞典。まず最初にその後の意味を示し、続いてその語が使われた代表的な歌を例に引き、詳しい解説をしている。一語につき2段組み2~4ページ。通して読んだわけではもちろんないが、拾い読みする楽しさがある。たとえば【ひと(人)】の語釈は次のようになっている。ヒトとは、本来不完全で茫漠とした、はっきりしない存在である。「我」とヒト、「神」とヒトというように、対置されるものによって顕在化する。対置されるものにより変化することから、「第三者」、「恋の相手」、「臣下」など、多様な意味に変化する。 (図書館から借りた本)
螢川 宮本輝著
マザー・テレサのことば
東京フィルメックス編「この映画を観れば世界がわかる」を読んで
『初歩からの世界経済』
第四百十九話_short 予言
厳格だった父は、私が小さい頃からなにかにつけ厳しい躾を強いてきた。遊ぶ相手もいちいちどこの家のどんな子供なのかと訊ね、多くの場合は付き合ってはいけないとか、友達としてこの線を越えてはいけないとか指示を言い渡された。
母は物静かな性格で父に対して従順な人だったが、父の厳しさには時として反意を感じてはいたとしても、逆らうようなことはなく、父に叱られている私に影で「逆らうんじゃない」という目配せをした。
当然のことながら私は思春期になるとこの厳格過ぎる父に逆らうようになったのだけれども、それは一時的な反抗期としてあしらわれ、それ以上に大げさなことになったりはしなかった。
このような家庭環境で育った私はすこぶるまっとうに社会に適合できる女性として成人を迎えることができたのだが……
父のせいだかどうかはわからない。私は幼い頃からさまざまなことに深読みをする癖を身につけて来た。
たとえば休日に外出する際にでも、留守中に誰かが訪ねては来ないだろうか。もしそれがただのセールスなら留守の方が幸いだけど、大事な用事の誰かだったら? いやその場合は電話が来るだろう。でも宅急便だったら? その場合はマンションの宅配ボックスにいれてもらえばいい。だけどときどきボックスがいっぱいだったり、宅配業者がボックスの存在に気がつかなかったりすると不在票が入って再配達の手続きが面倒だなぁ。しかし何かを注文しているわけではないから、たぶん宅配便は来ないだろう。しかし誰も来ないような塩梅で部屋の周りが静かすぎると、もしかして侵入者にとって言うことのない条件になるのでは? 近頃は空き巣が多いと聞くけれども、たとえマンションの十階という部屋であっても油断はできないと言うし……。
次から次へと湧き出てくる心配ごとが、また新たな心配を連れてきて、もしこうならどう、ああならこうと、考えれば考えるほど次の行動が取れなくなってしまう。
病的か?
いや、そんなはずはない。
自分で自分のことはなかなか評価しにくいのだけれども、深読みし過ぎ、心配し過ぎであることはおおよそ自覚はしているのだが。
結局こんな性格が故に、私は自分に自信が持てない自分を作り上げてしまったようだ。
きっとこの先いくら頑張ってもお金持ちになんてなれっこないし、なにかで大成功を収めるような器量もない。とりたてて美人に生まれついているわけでもないから、いい男と出会うようなこともないだろう。平平凡凡とした一日を繰り返して、一年が過ぎ、十年、二十年が過ぎ、私はなんのとりえもないまま朽ちていくに違いない。
運命とは不思議なもので、そんな私に何か奇跡が起きる、というともなく……
気がつけば老齢と言われる歳になってしまった。
「予言の自己成就」
こんな言葉を知ったのはほんの昨日のことだ。
その意味は、たとえなんら根拠のない思い込みであったとしても(これを予言と呼ぶ)、その予言を信じて行動することによって、予言通りの出来事が起きてしまうということだ。
私は自分自身で未来の自己像を作り上げ、その通りの人生を歩んできたのだと、いまになって気付かされても、もう遅い。
了
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◆春琴抄◆
こんにちは、ユダヤ人です
今日購入した本は
実名制の 本のレビューサイト
宇宙への秘密の鍵
ランチパスポート
#683 黒川博行著『破門』
無意識という物語 近代日本と「心」の行方
411 闇に香る嘘 下村敦史 第60回江戸川乱歩賞受章 H26.9.26読了
こうして、思考は現実になる
最近の読書 2014年冬 ―覚え書―
ちょっとまた、以前から気になっていた、子ども向けの本を読みました。
「クローディアの秘密」 E.L.カニグズバーグ 作 松永ふみ子 訳 岩波少年文庫
図書館や検索でよく目にするので、読んでみました。
40年以上前の作品ですが、新鮮で独創的な感じの話に、大人でも満足できました。(今まで読んでいないのがちょっともったいなかった)
狭い範囲の中で、こんなにおもしろい物語ができることに感心しました。
少女クローディア(ほぼ12歳)は弟のジェイミー(9歳)を誘って家出をします。行き先はニューヨークのメトロポリタン美術館。
長女で下に三人の弟がいて、自分だけしなければいけない仕事の不公平さや優等生でいることの毎日にあきあきしたのです。
クローディアは美術館が最近買い入れたという天使の小像に興味を持ちます。ミケランジェロの作品とされる、その真偽の謎を二人は解こうとします。
家出の行き先が美術館という発想に意表を突かれました。
クローディアは計画を立てるのが得意で、家出にジェイミーを引き込むところやお稽古のバイオリンケースに着替えを入れたり、くずかごから切符を見つけたりするところなど、準備段階からわくわくします。
クローディアとジェイミーは性格が反対でお互いないものを補える関係で、会話がおもしろいのも見どころ。終わり近くまでほとんど二人のやりとりだけだが、全然退屈しない。
「クローディアの秘密」というタイトルのことを忘れていたのですが、終わりの方で出てきて、思いがけないものがテーマになっているのがすごく新鮮でした。(どうしてこのタイトルなのか不思議だった)。
大人の自分には、フランクワイラー夫人との話や言葉が心に残りました。
夫人の言葉は心に響くものがいくつかありましたが、これは書き出しておきたいです。
日によってはうんと勉強しなくちゃいけないわ。でも、日によってはもう内側にはいっているものをたっぷりふくらませて、何にでも触れさせるという日もなくちゃいけないわ。そしてからだの中で感じるのよ。ときにはゆっくり時間をかけて、そうなるのを待ってやらないと、いろんな知識がむやみに積み重なって、からだの中でガタガタさわぎだすでしょうよ。そんな知識では、雑音をだすことはできても、それでほんとうにものを感ずることはできやしないのよ。中身はからっぽなのよ。
「山賊のむすめローニャ」
アストリッド・リンドグレーン 作 大塚勇三 訳 岩波少年文庫
アニメの原作で興味を持ちました。
タイトルから「小さなバイキングビッケ」みたいな冒険的でエンタメ性がある話だと思っていたが、予想とかなり違っていました。(途中から「ロミオとジュリエット」を連想した)。
物語は主人公ローニャが生まれた時から始まります。ローニャは山賊の頭マッティスの一人娘。
成長したローニャは森で暮らすというのがどんなことか覚えるため、一人で森に出されます。
ある日、ローニャは自分たちの城で、一人の男の子ビルクに出会います。彼は敵対するボルカ山賊の息子でした。落雷で真っ二つになった城の裂け目の向こう側に彼らが引っ越してきたということでした。
ローニャは猛反発しますが、ビルクが足をすべらせて、裂け目のすき間に落ちた時、彼女は助けます。
それから森で出会ったり、雪の中から今度はローニャがビルクに助けてもらう内に、ビルクのきょうだいになりたいと思います。
でも、親同士は争っていて、ある日、マッティスはビルクを捕らえてしまいました。
その時、ローニャがしたことは・・・
「ロミオとジュリエット」もですが、テーマはローニャが(ビルクも)父から独立して、一人の人間として成長する、生き方を選ぶ話に思えました。
人間の根本の感情、愛と憎しみがストレートに描かれていて、子どもが体験できるのがいい。
ビルクに対する細やかな気持ちやマッティスに対する葛藤は読ませます。
「はてしない争い」と「なくなったナイフ」の話が特に好きです。
森の風景描写やローニャがそこで親しんでいく様子にもわくわくします。
鳥女や灰色小人などがいて、ファンタジー要素が入っているのもおもしろい。(挿絵も良くて想像が膨らんだ)。
山賊がいっぱいいるのに、スカッレ・ペールぐらいしかローニャと絡みがなかったのが、ちょっとさみしかった。
アニメは(BSなので)まだ観られないが、背景美術が楽しみです。