「遠い日の呼び声」とは、ロバート・ウェストール作の短編小説集です。
今回の「遠い日の叫び声」は、前回の「真夜中の電話」に続く、ウェストールの短編のベストセレクションです。
徳間書店が子どもの本・二十周年記念作品として、2014年11月12日に再刊行しました。
その挿絵に、宮崎駿巨匠の最新絵が使われているということで話題になっています。
<ウェストールとは?>
「弟の戦争」などで知られる、イギリス児童文学を代表する作家です。
1929年~1993年。イギリスに生まれ、美術教師として働く傍ら、一人息子のために書いた処女作「“機関銃要塞”の少年たち」がカーネギー賞を受賞したことで、作家としての道も歩み始めます。
他にも「かかし」「海辺の王国」「弟の戦争」などで知られています。
今回の「遠い日の呼び声」には、「空襲の夜に」「家に棲むもの」など全9編が収録されています。
<宮崎駿の最新絵>
なんといってもこの本は、宮崎駿の装画が使われているところが一番の見どころでしょう。
作品自体も素晴らしいですが、手に取るとき一番最初に目につくのは、間違いなく表紙です。
不可思議な森を目にする青年と、その傍にいる豚の姿に、「これから何が起こるんだろう」とわくわくしてしまいます。
さすがに風の谷のナウシカのころと比べると劣化しているという意見もありますが、筆で味わいのある絵を描くことや、敢えてパースを狂わせることで空間の広がりを見せる画法は凄いと思います。
「広角レンズと望遠レンズが混ざっている」というのは的を射ていますね。
<一将成りて万骨枯る?>
宮崎駿の話が出ると、大抵このことわざが出てきますね。
意味は、功績が目立つ人の影には、それを支えた無数の人の努力・犠牲があるということ、です。
確かに宮崎アニメには多くの観客を魅了する力がある半面、それを手掛けるスタッフの過酷な状況も見てとれるのです。
私は宮崎アニメの中では天空の城ラピュタが1番好きですが、スクリーンで観たもののけ姫の蛇のような気持ち悪い動きを未だに思い出せます。
あれもまた製作スタッフの血と汗と涙の結晶ですね。
なお、このことわざには「下で働く者の苦労を忘れるな」という戒めの意味が含まれます。
まだランキングには入って来ていませんが、これから注目される1冊となるかと。