「おおおおおおおお-----!!!!!」 という絶叫と、 爆発音がほぼ同時に響き渡り、 チューブが振動で大きく揺さぶられた拍子に、 薫子が天井に頭をぶつけて昏倒した。 「薫子さまっ!!」 すぐにチューブは安定を取り戻し、 終着点鎌倉山夫婦池(めおといけ)に強制射出される。 池という名前に似合わず割と大きめな夫婦池は、 太古に富士山が噴火した溶岩でできた洞窟でつながっていると言われている場所だった。 先に脱出したチューブはボート乗り場に集められ、 要塞の要員たちは 併設されているヘリポートから 藤沢の飛鳥重工本社に向かって 次々と飛び立っていく。 再び人の形をとった逸鬼と一緒に薫子を抱え出した萌は、 その頭を膝に乗せると、 「救護班っ! 薫子さまがっ!! 急いでっ!!!」 と叫ぶと、ぽろぽろと涙をこぼしながら、 薫子の額に流れる血をハンカチでぬぐっていく。 「萌…」 声を掛けようとした逸鬼が、 ピクッと動きを止めた。 異様な気配を感じて夫婦池の方を振り返ると、 その中央が盛り上がっていく。 刀の鍔(つば)に親指をかけ、 鯉口を切った逸鬼が姿勢を低くしていつでも抜刀できる体制をとった。 つづく
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