アメリカの作家、G・G・フィックリングによる女私立探偵“ハニー・ウエスト”シリーズの第2作『ハニーよ銃をとれ』を読みました。
発表は1958年。邦訳は1961年にハヤカワポケミスから。
1960年代に、アン・フランシスという女優を主演としてテレビ・ドラマ化。日本でも「ハニーにおまかせ」という題名で放送されたそうです。
アメリカではDVDが発売されてます。
ハニー・ウエストは20歳代のスタイル抜群のブロンド美人。
私立探偵だった父親が何者かに殺害され、その犯人を追うために自身も私立探偵になった、という設定。
小説は、アメリカ私立探偵小説に一般的なフォーマットで書かれています。私立探偵による一人称です。
私立探偵物によくある、依頼を受けて殺人事件に巻きこまれ、いやおうなく犯人捜しに奔走する、というパターンが展開されます。
このシリーズの特徴は、主人公ハニー・ウエストが容疑者の男たちに、服を脱がされそうになったり、手込めにされそうになったり、と軽いお色気シーンが連続するところ。
といっても、50年代の小説ですから、直接的な猥褻描写は一切なし。
当時の読者は、懸命に脳を回転させて妄想していたのでしょう。
ハニー女史、なかなか有能な探偵で、色香で男から証言を引き出したり、ときには拳銃にものを言わせてどんどんと捜査を進めます。
ただ、この作家、プロット展開はあまり上手はなく、サスペンスはあまり感じません。
意外なのはこの『ハニーよ銃をとれ』、骨格だけはちゃんと本格ミステリになっていること。
ラストシーンでは、ハニーが容疑者たちを集めて、謎解きを始めます。
「名探偵 皆を集めて さてと言い」という川柳がありますが、ハニーも「さて」とセリフから謎解きを始めます!
しかも、真相は意外なもの。ただ、伏線はあいまいだし、アンフェアなシーンもあるので、意外というより、唖然の真相。
ハヤカワポケミスで長編9作品が訳されていますが、神田神保町の古本を回っても、ようやく3冊入手できたにすぎない、レア物です。
もし古本屋で見つけたら、お宝かもしれませんよ。
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『ハニーよ銃をとれ』 G・G・フィックリング
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