ちょっと長期の出張があって、文庫本で面白いものはないか物色していたところ、ふと本書が目に止まりました。以前、テレビ化された際にはちゃんと最後まで観たのですが、それで原作を読んだような気になってしまい、今の今まで手に取ることはありませんでした。ここはしっかり原作を抑えておこうということで、今更ながらですが、鹿男です。
で、原作を読んでみたところ、テレビ版はほぼ原作をなぞっていることがわかりました。別物にはなっていなかった。故に非常に読みやすかったというのが第一印象。もっとも原作の深みというのがあって、SFファンタジー、エンタテイメントとしては本書の方が圧倒的に面白いと思いました(京都、大阪、奈良の剣道対抗戦は小説の方が俄然面白かった)。
万城目さんの作品は、日本古来というか失われた歴史、風習、伝説などモチーフにした作品が多く、それをうまく現代にマッチさせ、かつ日本的なるものにもっとも遠い存在である青少年、若者を噛み合わせることによって、面白さを醸し出すのがうまい作家さんですが、 本書はその真骨頂ともいうべき作品であると思います。
映像化されることが多いのもうなずけるストーリー、作品群。今後も期待したい作家の一人です。