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第二十八話_short 鼻血

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 横たわっていると、鼻のあたりになにかが流れているのを感じた。

 風邪ひいたかな、鼻水が垂れてると恥ずかしいなと思ってずずっと吸い上げる。だが粘性が弱いそれはいつもの鼻水と違う感じ。ちょうど顔の前に置かれていた指先で鼻の下に触れて確かめると、どうやら鼻水ではなく鼻血が出てきたようだ。

「男の子の鼻血はよくない」

 子供の頃、母親が言っていたのが急に思い出された。

 なぜ男の子の鼻血がよくないのか、未だもってよくわからないが、血友病と関係していると聞いたことはある。

血友病とは劣勢遺伝子が関係していて血が止まりにくい病気だというが、そういうのは一万人に一人というくらいの確率らしい。それでも男の子の鼻血はよくないなんて言われてしまうのだ。

 考えている間にも鼻血は流れ出ている。なにか拭う者があったっけ。僕は血友病なのかな? いままでそんなことはなかったけどな。

 鼻を拭った指先に力が入らない。腕が動かない。これは鼻血のせいなのか。

 物音ひとつしないのに先ほど聞いたブレーキがキシル音だけが頭の中に響いている。冷たいアスファルトの上に横たわる僕を覗き込むいくつもの影を認めながら意識が遠のいていく。

                                   了


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