＜彼の妻は、「どこまでも無垢でいるのですか。神を呪って、死ぬ方がましでしょう」といったが、ヨブは答えた。「お前まで愚かなことをいうのか。わたしたちは、神から幸福をいただいたのだから、不幸もいただこうではないか。」（9.10節）＞ 主は、突然の悲惨な災難にも神を非難することのないヨブを喜ばれた。そしてサタンに「・・・彼はどこまでも無垢だ」と言われた。するとサタンは「・・・手を伸ばして彼の骨と肉に触れてごらんなさい。面と向かってあなたを呪うに違いありません」と言った。 主の許しを得たサタンの手によって、ヨブは頭の先から足の裏までひどい皮膚病に罹った。「ヨブは灰の中に座り、素焼きのかけらで体中をかきむしった」という記事を読むだけでヨブの苦しみが伝わる。 「それまで敬虔な信仰に生きていた彼の妻は、最初の試練にはなんとか持ちこたえたものの、夫の瀕死の姿にその信仰を失ってしまいました。信仰とはこれほどまでに大きな犠牲を強いるものなのでしょうか。もしもそうなら信仰など持たない方が人間は幸せなのではないか、このような疑問が起こったとしても不思議はありません。」と井上牧師は説かれる。 妻は夫に信仰を捨てて、死ぬ方がいいでしょうと自殺をほのめかす言葉を吐いた。サタンが最初に「ヨブが利益もないのに神を敬うでしょうか・・・」と言った言葉を思い出す。「何もかも失い、信仰に何の意味があるんですか」妻の声は今でも聞こえる。 「罪と罰」の中でもこれと似た場面があった。娼婦となって家族を養う女性に主人公が「お前はこんな悲惨な環境にあってもなぜ神に祈るんだ。お前の神はお前に何をしてくれるんだ」というようなことを問いかける場面があって心に響いた。 「このようになっても、彼は唇をもって罪を犯すことはしなかった」と聖書はヨブの鉄壁の信仰を記す。 三人の友人が、ヨブを見舞い慰めようとやって来た。「遠くからヨブを見るとそれと見分けられないほどの姿になっていたので、嘆きの声を上げ・・・、彼らは七日七晩ヨブと共に地面に座っていたが、その激しい苦痛を見ると、話しかけることは出来なかった。」 「幸福」と思っていたことが「不幸」で、「不幸」がほんとは「幸福」だったと後で気づくこともある。
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