「コレキヨの恋文」、「真冬の向日葵」と続いた、 三橋 貴明×小説家・さかき 漣のコラボ作品第 3 弾です。 この作品が最終編らしいです。 橘 航太郎は、曽祖父の代から政治家を輩出する家系に生まれ 父の亡き後、後を継ぐべく弔い選挙に出たのですが、 日本のために未を粉にして働く気のない航太郎は支持者を集められず、 惨敗してしまいます。 一方ギリシアでは、日本人を母にもつソフィアが、 自分の不安定なルーツに悩みつつ生きていたところ、 201X 年にギリシアは破綻、ユーロを離脱した設定になっています。 就職難もあって、ソフィアは日本の大学へ留学するのですが 自分が日本の血を引くことを快く思っていない彼女の心中は複雑なのでした。 この作品では、霧島 さくら子が首相になってから 5 年ほどの歳月が流れ コレキヨに授けられた教えと、経済に秀暁した首席秘書官に助けられたお陰で 日本経済はようやくデフレから脱却しようとしています。 これが本当に近い将来の日本であれば、どんなにいいことか。 このお話はきっと、三橋さんの夢を文章にしたものでしょうね。 生意気な女の子ソフィアが、日本とギリシアとグローバリズムについて 徐々に色々な知識を得て、成長していく姿が分かりやすいです。 私も昔は、こんなふうに生意気だったかも・・・。 ソフィアくらいの年齢から十数年経ちましたが、良い大人になれているかどうか 自分の胸に手をあてて考える機会になりました。 それと、航太郎に罵声を浴びせる群集に向かってソフィアが言い放った 「日本人の誇り」についても、もう 1 度考えてみようと思います。 国外に出ていないと、忘れがちなんですよね、こういうこと。 読むと、日本に生まれて良かった、 海外に出るときに持っていけるのが日本のパスポートで良かったと思える本です。 あと、軽い文体なのに、日本の成り立ちやギリシアの歴史について 結構詳しいことまで解説されているので、 日本史やギリシア史について興味がある方にお薦めです。
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