円居 挽さんの「丸太町ルヴォワール」を読みました。
ー城坂論語は怪我の療養の為、祖父が暮らす屋敷にいた。昼寝から目覚めた彼は、侵入者の右手を咄嗟に掴んでしまう。「ルージュ」と名乗ったその女性の右手を握ったまま、論語は彼女との議論を楽しむ。だが、仕込まれていた睡眠薬を飲まされた論語が目覚めた時、「ルージュ」の痕跡はすべて消え失せ、祖父が死んでいた。
3年後、論語は「双龍会(そうりゅうえ)」と呼ばれる私的裁判の被告となった。論語の携帯電話が祖父の部屋に落ちており、その携帯電話を使って祖父のペースメーカーを狂わせて殺したと疑われたのだ。検事役の黄龍師には、双龍会随一の実力と人気を誇る龍樹家がつき、論語の有罪は決まったと思われたが……ー
読後最初に浮かんだ言葉が「疲れた……」でした。どんでん返しに次ぐどんでん返しで、一体何が真実なのかよくわからなくなります。
まず、第一章で描かれるのが論語とルージュと名乗る女性の出会い。侵入者であるルージュは論語に右手を握られたからとはいえ、振り切ることもなく居座って論語と言葉遊びのような議論を展開します。論語は容姿端麗、頭脳明晰、祖父は大病院の経営者という恵まれた環境にいますが、この時まだ中学3年生。それでここまで議論できるとは恐るべしというか可愛くないというか。
物語のクライマックスである第3章。論語は祖父殺しの疑いをかけられて「双龍会」という私的裁判の被告になります。この「双龍会」は検事役の黄龍師、弁護士役の青龍師、裁判官役の火帝が場を支配し、私的というだけあってなんでも有り。騙せれば証拠が偽物だろうが何でも良いという場所です。論語が被告の座に座ったのは、ただもう一度ルージュに会いたかったからという理由です。そして黄龍師となったのは、どんなシロもクロにしてしまう、手段を選ばない龍樹家。青龍師となった瓶賀流は、勝てる可能性のない勝負に挑まざるを得なくなります。そんな流を助けるのが後輩の達也。この春から京大に進学したという達也の活躍。この双龍会での双方のやり取りが凄まじい。あらゆる場面に張り巡らされていた伏線がどんどん回収されていきます。読者は最初から騙されていたのだと思い知らされました。事件が本当に解決したのかどうかは、結局薮の中のような気もします。論語はルージュに会えるのなら、殺人犯になっても良いと思ってるようです。ミステリだけど論語の初恋と失恋の物語でもありました。龍樹家の面々も流も達也もキャラが濃く永遠の中二魂のようです。麻雀がよくわからなくて意味が取れない部分もありましたが、流には頑張ってくださいとしか言いようがない。達也にも色々隠されていることがあるようだし、続編でわかっていくのかな。どんでん返しはもうちょっと少ない方が効果的だと思うけれど、流にはやられました。そうだったのね。全然気がつかなかったですよ。
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