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マルクス主義形成の論理

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 古本屋の105円左翼本シリーズ、著者の黒田寛一氏はあの革マル派最高指導者ですんでフザけた事を書くと怒られそうだ。因みに何故古本屋に有るかと言うと持ち主が思想的に転んだと言うよりも「遺品整理業」でもある古本屋が故人の蔵書を一山幾らで引き取った際に混じっていたんじゃなかろうか?某「人間革命」なんぞもそんな感じでブックオフで微妙な値段が付いて売ってたりするし。

マルクス主義の形成の論理

マルクス主義の形成の論理

  • 作者: 黒田寛一
  • 出版社/メーカー: こぶし書房
  • 発売日: 1994/02
  • メディア: 単行本

 今時の左翼を「インスタント左翼」と斬り捨てる黒田氏なんですが「今時」が戦後昭和30年頃でして団塊世代すら小学生やってた時分だ、ま~た内ゲバ体質かよ?と言うのは的外れな批判でして、物凄く勉強している人がしっかり読み込んで内容を頭に入れてその上で批判しているんだよね。それに案外と「論敵」として批判しつつも相手の研究や著作物に良い所があればそこはしっかり褒めるんで、「敵」を作り上げて徹底的に罵倒の限りを尽くす今時のサヨクとはちがいます。叩く相手も自分と同じレベルか上の研究者相手で「低学歴・低所得のネット右翼」を高学歴・高所得の自称「リベラル」が罵倒するような品の無い事はしないワケです。  さて、はっきり言わなくても内容が難しいので2度読んだんだけど「マルクス主義」「形成」の論理ですんで青年マルクスの初期の著作物から後のマルクス主義に至る萌芽を読み取ろうと言う凄くアカデミックな一冊。なのでマルクスの学位論文あたりから「経済学哲学草稿」「神聖家族」「ドイツ・イデオロギー」「共産党宣言」を分析して「人間はなんであり、またはなんであるべきか」と言う青年マルクスの苦悩の道を辿ろうと言う大変な本です。  因みに「経済学哲学草稿」「ドイツ・イデオロギー」「共産党宣言」は我が家にあるんで、本書を読んであらすじと言うか著者の意図が掴めた気がするので放置しておかないで読もうかな?我ながらバリバリの市場システム信奉者なのにマルクス主義関係の本をそこそこ読み進めて来てそろそろ共産趣味者を名乗っても良い気がするけどそれには読まねばならぬ本がまだ山の様に有りそうか、不勉強な団塊インスタント左翼の皆様もどうせヒマでしょうから105円で拾って来て読んだ方が良いよ。

 マルクス研究者と言うよりマルクス信奉者過ぎる黒田氏なのでマルクスの言動に対しては全くの無批判かつ全面肯定なのはどうだろうか?マルクスのパートナーでもありパトロンでもあったエンゲルスについては晩年の心境の変化をちょっと批判したりしているんだけど。  難解ながらも入門書形態ですんで「マルクス主義」が何かがよーく解ります、ついでに何で当時の大学生が夢中になったのかも良く解りました。「マルクス主義」なるものは「哲学」なんだそうな、当然「マルクス経済」も哲学です。コレはビックリと言うか目からウロコ。それで「人間はなんであり、またはなんであるべきか」何て言う問いかけが有れば大学進学率ヒトケタ%時代の大学生などと言うエリートの卵はそらイチコロだと思う。基本「安く買って高く売る」だけの下衆なその他の経済学とは崇高さが違うよ。  そう言えば先日ブックオフの経済学コーナーに内田樹氏の著作が置いてあって吹きましたが、マルクスが「経済学は哲学」と言うんだからマルクス信奉者の内田氏が経済学の本を書くのも充分アリだろうね。逆に丸善に行っても経済学のコーナーにはマルクスは置いてなくて哲学コーナーに並んでいたりするので、そんなところにも当時の事情を知る物と今時の人とのズレが出るんだなと。  この「~は哲学」と言うのはウソでも無いし間違ってもいないとは思うんですが、そう言うアプローチで何かに入るのは絶対間違っていると思うよ。私も職業会計人として複式簿記の美しさとシンプルで機能美溢れる姿に哲学的な物を感じますが例えば商業高校の生徒や簿記学校の受講生が第一回の授業で「複式簿記は哲学である」なんて教え込まれたらその後の簿記の学習と習熟に間違い無く支障が出ますよ、「経済学は哲学」と言うのはある程度学習が進んだ人間がふと思う分には良いけど入り口でそんな事吹きこまれたら間違いの素じゃないのかね?  経済学が哲学と言うのは上級者にとっては真理かもしれないが初学者には間違いだと思うんだけど、それはともかく本書は「マルクス主義」なる哲学の成立過程を追っています。なのでプロイセン帝国の欽定哲学であり御用学者だったヘーゲルの「絶対的観念論」から入ってフォイエルバッハの直感的な唯物論に基づくヘーゲル批判を乗り越えて実践的唯物論に至ったとか何とか。この辺の説明で黒田氏は図示して説明を試みているんだけどラセン運動する意識とか概念が抽象的過ぎて正直解りません、当時の大学生は本当に理解出来ていたんだろうか?  黒田氏と言えば反スターリン主義者なのでこのマルクス哲学がスターリンとソヴェトの研究者によって鈍器のような物に改竄されたのが許せない様子ですが、「現実の中で」と言いつつも当時の大学生にすら難解で求道的な哲学論を国家運営の現場の中で教育水準が高いとは言えない当時のロシア人農夫や工場労働者にも理解出来る話に改めるのは仕方ないんじゃないかな?そこで先鋭化すると大衆が付いて来れないんだし、ヘーゲル哲学も理論以前にプロイセン帝国の御用学者なんだからムチャ言うなよ。とか俗物は俗論で考えてしまうよ。  そう、言っちゃ悪いが学生さんなら「哲学」と言われ理性と合理の通りになる「現実」を説かれたらアタマやられると思います、ネット右翼と呼ばれる連中も若い人ならちょっと学習すれば簡単に転んでマルクス主義者になっても不思議じゃない。しかし、50歳近いオッサンとしては俗世間で心が汚れているのでそんな理想論じゃ心がもう動きません。職業会計人であり法律家として会社のリアルなお金の流れや遺産争いの現場に立ち会い続けていると俗界にドップリですから、「人間はなんであり、またはなんであるべきか」なんて考えている人は政治家でも経営者でも見かけないなと。  プロレタリアとして己を商品化して強欲な資本家に肉体を切り売りするみじめさ、と言うのもちょっと上から目線過ぎるし親の脛齧って大学に行かせてもらってる学生さんじゃないとそんな仮想的有能感は共感出来ないんじゃないかな?19世紀半ばのヨーロッパはともかく戦後日本なら傍目にはみじめなプロレタリアだろうけど本人はマイカー・マイホームに家電揃えて得意なんだから余計なお世話と言うかそりゃ嫌われるわ、そんな現実との迎合を俗流や俗物として拒絶する黒田氏は凄いんだけどね。


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