『量子テレポーテーション』 古澤明 2009/08 著者は東京大学工学部教授。 量子テレポーテーションについて数式を使わないで説明しようとする本。 ふむふむ、さっぱりわからん。数式を使わないのが無理ゲーである上に、お世辞にも著者は説明がうまいとは言いがたい。「量子力学がわかったと思ったら、それは量子力学を理解していない証拠である」と言った著名な物理学者がいるくらいなので、致し方ないか。 著者は96-98年、カリフォルニア工科大学のジェフ・キンブル教授の研究室で量子テレポーテーションの実験研究を行う。この分野の研究では日本国内では第一人者。 量子テレポーテーションは最も簡単な量子コンピュータである。量子テレポーテーションでは「情報」を伝送するだけ。また「瞬間」では伝送されない。あくまでも光速以下の伝送である。 量子テレポーテーションの成功は、EPR(アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼン)パラドックスが破れること、すなわち量子エンタングルメントの存在の実験的証明である。 1つの量子を2つに分割して、相対位置がX、運動量の和がPであるとき、この状態を量子エンタングルド状態という。不確定性原理で1つの量子の位置と運動量を同時に測定することはできないが、2つの量子で2つの物理量(相対位置と運動量の和)を同時に測定することは、不確定性原理に反しない。 実際には光の周波数を半分にして量子エンタングルメントを生成する。光子1個のエネルギーは(νは周波数、hはプランク定数) hν=2h(ν/2) なので、波長変換で周波数1/2の光子2個になったことになる。 この一方の光子A(量子対の片割れ)に「入力」を干渉させ、ベル測定を行う。残った光子Bにベル測定の結果から変位操作して「入力」を再現する。これによりAからBへ「入力」の信号がテレポートしたことになる。
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