小島柚木には天敵がいる。子どもの頃、自分を苛めた高宮一成だ。最悪にも高校で同じクラスになった一成は、冷たくあしらう柚木に何かと構ってくる。さらに水泳の授業を目前にして、カナヅチの柚木は、有望な水泳選手である一成から泳ぎの特訓を受ける羽目に。無神経でお調子者だと思っていた一成の誠実さに触れ、特訓も楽しくなるが、一成にはどうしてもそっけない態度をとってしまう。自己嫌悪に陥る柚木だったが、突然一成に「好きだ」と告白され。 若くて可愛くてニンマリできます。変に大人びていない、まだ箱の中での。一生懸命で初々しいのです。ウフフ。 ★★☆ 思わぬことを言われた気がして、柚木は赤い目をしたままポカンと一成を見上げる。 そんな柚木をちらりと見た一成は、『くそ、みっともねーよな』と小さくぼやいた。 みっともなくなんかない。ちっとも、みっともなくなんかないと思った。 そういう必死なところが、取り繕ってばかりで、全てを周りのせいにして諦めていた自分などよりも、よっぽど潔くかっこ良く思えた。真弓も、一成も。 「おい、なんでそんなに真剣に悩むかな…」 「……いや、でも、どこだろう?」 「頼むので俺に聞き返さないでくれませんか…。なんか今、ちょっとだけ胸が痛かった」 言いながら、なぜか虚ろな表情でハハハ…と笑った一成は、柚木の上から身体を離すと、その隣に並ぶようにしてベッドに背をもたせかけた。
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