文庫化が待ちきれずに、単行本を買ってしまいました。 「半沢直樹」シリーズ、第 3 弾です。 前作で、伊勢島ホテルの再建を成功させ、 同時に金融庁捜査を切り抜けた半沢さんなのに 子会社の証券会社への出向が命ぜられます。 出向先の会社には、バブル世代の理不尽な上司にイライラしている ロスジェネ世代の後輩がいました。 今回のお話は、IT 企業がライバル会社を買収したいと、 証券会社を訪ねてくるところから始まります。 なぜそんな大きな仕事を、本来の取引先である銀行に頼まずに、証券会社に頼むのか? 不思議に思った半沢さんは、また独自に調査を進めていきます。 「オレたちバブル入行組」の頃よりは、半沢さんが年をとっているイメージがあります。 第 1 作の頃は、理不尽な上司に歯向かうやんちゃな人でしたが 本作はそれだけではなく、腐る後輩を言葉で諭したり、 自分の背中を見せることによって後輩に今後の道筋を示したりしています。 「正しいことを正しいといえる、ひたむきに働いた人間がきちんと評価される」社会を目指して 自分のポストにはこだわらずに懸命に働く半沢さんを見るとやっぱり こんな上司は実際にはなかなかいないので、お話の中だけで満足するというか 空想の世界で自分を慰めるような感じになって、ちょっと悲しくなりました(泣) 実際は、こんな上司いないので、自分がそうなるしかないのです。 さらには、自分が上司というポジションにつけるのかどうかも微妙です。 会社で働けるかどうかも、わからないので。 ですが、家族関係にもそれは当てはまるというか、そろそろ 40 になろうかという年になると 自分の両親がいかに完璧ではなかったか、ただの人であったかというのが 良く分かるようになりました。 「ただの人」なので、自分にとって都合の良いことを考えるし、 子どもの気持ちに本当に沿ってくれたかというと、そうでもない。 ですが、いざ自分が子どもを持ったときには、親のそういうところを引き継いではいけないのは 重々承知していますので、「こんな大人がいてくれればよかったのに」とかつて思っていた 「大人気ある大人」を目指して、日々努力を続けなくてはならないのです。 ならない、というと少し語弊があります。私がそういう大人になりたいと思っているから やっていることなんですよね。 反面教師であるにしろ、何らかの道筋を導き出せるわけですから それはそれでいいのかも・・・とも思います。 ダメ親とか、ダメ上司とかがいても、少なくとも「あんなふうにはならないぞ」と思えれば 未来のルートを決めるのは楽です。 なんでも人のせいにしていないで、人の振り見て我が振り直せ、というのが 本書を通じたメッセージかと。そしてそのメッセージに、私も同感です。 今回は珍しく、半沢夫人の花さんが全く登場しないお話でした。 ドラマとは違って原作の花さんは、半沢さんの仕事に理解がなく とんでもなく騒々しい女性なので、いないと火が消えたようです。 それもあってか、本作は淡々と話が進み、静かで重みのある台詞がたくさん出てきます。 特に、頭取の中野渡さんの台詞は、一言一言がはっきりとしていて、 少ない台詞なのにとても重厚です。 単行本でも、十分に満足できるお話だと思いました。 皆様にもお薦めいたします。
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