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地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第6回)

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 唐澤が、黄色い規制テープをくぐって土手から橋下の河原に下りると、被害者が倒れていた場所には死体輪郭線が描かれて、どす黒い血が地図のように広がっていた。 周りには複数の遺留品を探す捜査員の姿が見える。 「害者は、あそこから橋の欄干を越えて落ち、この河原の石に頭をぶつけて首の骨を折って即死した、そういうことですか?」  唐沢は古い石造りの橋を見上げながら訊いた。 「いや、それが、しばらくは生きていたらしい」  毛利は答えた。 「生きていたらしいって、誰か、生きていたのを確認してたんですか?」 「そうだ、カップルが二組いてな、深夜午前零時半を過ぎてたそうだが、そのカップルの四人が、息を引き取る前に、害者の最後の言葉を聞いてたんだ」 「最後の言葉って……ダイイングメッセージですか? それを聞いたのが二組のカップル……で、どんなこと言ったんすか? 害者は」 「それが 『え、り、か……』って言ったらしいんだ」 「『えりか』って女の名前じゃないっすか。 それが、買春した相手の少女の名前ってことですか?」 「そうじゃないかと思う。福本は、死亡前日の十二日は大学を休んでいた。 そして、十二日の夜七時頃、西都キャピタルホテルのレストランで未成年と思われる少女と食事をしているのを目撃されている。 その少女の名前がえりかじゃないかと思うんだ。 今、その少女の足取りを追ってるところだ」 「二組のカップルは、害者が転落する前に、他に誰かの声を聞いていないんですか?」 「聞いてたよ、争う男女の声を。内容はよく聞き取れなかったそうだが……男はおそらく福本、そして、女はえりか、じゃないかな、俺はそうにらんでいる」 「じゃあ、先輩は、そのえりかという少女が突き落したんだと……」 「いや、突き落したかどうかは分からんが、転落に関わっているのは間違いないと思っている」 「もしかしたら、少女が加害者ってことも……」 「そういうことになるな……ただ……」  毛利は何かひっかかることがあるようだった。                                                     続く

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