評価:★★★
ちょっと変わったタイトルだけど、読めば意味はわかる。
「甘栗」だけ説明すると、これは主人公の名字。
「甘栗晃」(あまぐり・あきら)という高校二年生が主役のミステリである。
探偵だった父・清吾が突然の事故死を遂げてしまい、
好きだった絵画をやめ、通っている高校も中退することを考え始めていた矢先、
「清吾へ仕事を依頼人した」と名乗る12歳の少女・淑子が現れる。
最初は、探偵のまねごとなんて全く考えていなかった晃だが
なりゆきで依頼(淑子の母親探し)を引き受ける羽目になる。
殺人のような凶悪犯罪は起こらないが、
日常の謎よりはちょっと深刻な事件に巻き込まれた、晃の奮闘ぶりが描かれる。
幼なじみの直哉とか、美術部員の三ヶ日さんとか脇役陣も魅力的なんだが、
驚き、かつ嬉しかったのは藤森涼子さんの登場だった。
作者の、他のシリーズで主役を張っている彼女だが
本作でも、晃を支え導く大人の一人として登場している。
そういえば最近、彼女のシリーズが発表されてなかったなあって思ったが
しっかり探偵として頑張ってました。
メインストーリーは失踪人を追うミステリなんだが
(シンプルな事件に見えて、真相はかなり意外。さすがは太田忠司。)
同時に、晃の成長を扱った物語でもある。
父を失ったことから、否が応にも
自分の将来をゼロからもう一度考え直さざるを得なくなった晃。
その結論はまだ出ていないので、次作以降に持ち越しになるのだろう。
私は青春ミステリは苦手というか嫌いだって何回も書いてるが
今作はそんな気にならずに読めた。素直に次作が読みたくなったよ。