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甘栗と金貨とエルム

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甘栗と金貨とエルム (角川文庫)

甘栗と金貨とエルム (角川文庫)

  • 作者: 太田 忠司
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/02/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★

ちょっと変わったタイトルだけど、読めば意味はわかる。

「甘栗」だけ説明すると、これは主人公の名字。
「甘栗晃」(あまぐり・あきら)という高校二年生が主役のミステリである。

探偵だった父・清吾が突然の事故死を遂げてしまい、
好きだった絵画をやめ、通っている高校も中退することを考え始めていた矢先、
「清吾へ仕事を依頼人した」と名乗る12歳の少女・淑子が現れる。

最初は、探偵のまねごとなんて全く考えていなかった晃だが
なりゆきで依頼(淑子の母親探し)を引き受ける羽目になる。

殺人のような凶悪犯罪は起こらないが、
日常の謎よりはちょっと深刻な事件に巻き込まれた、晃の奮闘ぶりが描かれる。

幼なじみの直哉とか、美術部員の三ヶ日さんとか脇役陣も魅力的なんだが、
驚き、かつ嬉しかったのは藤森涼子さんの登場だった。

作者の、他のシリーズで主役を張っている彼女だが
本作でも、晃を支え導く大人の一人として登場している。
そういえば最近、彼女のシリーズが発表されてなかったなあって思ったが
しっかり探偵として頑張ってました。

メインストーリーは失踪人を追うミステリなんだが
(シンプルな事件に見えて、真相はかなり意外。さすがは太田忠司。)
同時に、晃の成長を扱った物語でもある。

父を失ったことから、否が応にも
自分の将来をゼロからもう一度考え直さざるを得なくなった晃。
その結論はまだ出ていないので、次作以降に持ち越しになるのだろう。

私は青春ミステリは苦手というか嫌いだって何回も書いてるが
今作はそんな気にならずに読めた。素直に次作が読みたくなったよ。


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