創造主=時無しの人形師に最も愛された最高傑作、人形の女王・セレネ。心を持っているのに体を動かせず、喋ることもできないように作られたセレネは、長い長い時間、
真っ暗な霊廟の中で迎えが来るのを待っていた。そこに現れたのは、墓荒らしを追ってきた人形師のアーセル。セレネが魂持ちだと見抜いて工房に連れ帰ったアーセルの手により、止まったままのセレネの「人生」は動き始めた。人形師と人形の禁断の恋、そして魔抱石の秘密…人形と人間の壮麗なるラブストーリー、感動の終幕。
ラストはアーセルと人形の女王の話。いやでもなんか最高傑作というにはセレネのイラはあまり管理人好みではなくて凹んでみたり…ううん。まぁようやくアーセルにも春が来ましたよと。長い時間を過ごしたせいなのか情緒的には結構育っていてあまり人形ぽくも女王ぽくもないセレネなのですが、アーセルをいちいち動揺させてくれて楽しかったです。時無しの人形師とバラッド、魔抱石についても語られており。時無しの人形師とアーセルの違いがちょっとあざといかなぁ(苦笑)。前2作のキャラも出てきます。読み返したくなりました。
欠けた、あるいは足りないものを求めて埋めるのか。別のところから別の形で補うのか。とか考えるとオペラシリーズと似た感触を覚えます。 ★★☆
──自分の創造主は、もう、とっくに死んでいる。
(見た目はそっくりでも、違う。バラッドは、違うのだ。おそらくは、彼も、墓守なのだ)
創造主がもうこの世にいないことも、セレネは本当はわかっていた気がする。
昔は、創造主がそんなことを考えているなんてわからなかった。
今だったら、どうだろう。暗い言葉を繰り返す彼を抱きしめて、大丈夫、と慰めてあげられたかもしれない。
──大丈夫。そんなに悲しまなくても、私たちは生きていける。
そんなふうに。