内容(「BOOK」データベースより)最近、日本経済のことをしっかり考える機会が少ないので、日本経済に関する評論はできるだけ旬のうちに読んでみようと心掛けるようにしている。だからといってそんなに多くは読めないし、普段は購読してる日本経済新聞もあるので、この手の本は平均すれば1ヵ月に1冊ぐらいのペースで読めればと思っている。旬な経済評論は、近所のコミセン図書室の新着図書の棚をチェックしていると出会うことができる。 僕は週刊アエラの熱心な読者ではないので、ぐっちーさんという人がコラムを連載しているということすら知らなかった。比較的よくアエラを読んでいる妻の方がぐっちーさんのことはよく知っているらしく、僕がこの本を借りて読んでいると、珍しく「次は私に読ませて」と言ってきた。 基本的にこの本はぐっちーさんの連載コラムを1冊にまとめたものなので、各節が細切れになっている上に論点がたびたび重複する。話の脱線も時々ある。全体的なトーンは日本経済に対して楽観的な見方をする人で、自分の付加価値を、元々が投資銀行に勤めるバンカーで市場と向き合ってきた実践者である点に置いている。アベノミクスのサポーターである浜田宏一教授に対してすら、大学の教授など実際に金融市場で取引した経験もない人には経済のことはわからないと仰っている。大した自信だ。 論点が細切れになっているので全部ご紹介するわけにはいかないけれど、この人の目立つ主張について以下の通り挙げてみた―――。 【日本の公的債務について】 日本の状況をかつて経済危機に陥った韓国やアルゼンチン、イタリア、スペインあたりと同じように考えるのは間違い。日本国債を買っているのは日本の金融機関や投資家なので、外国勢に売りを浴びせられて国債価格が大暴落する可能性は低い。日本人が国債保有している間は債務危機に陥ることはない。(なんだか、問題先送りのように聞こえるけど…) 【円相場について】 円高ウェルカム。円が買われるのは日本に対する信頼の証である。円安誘導で儲かるのは輸出企業だけだが、日本の輸出依存度は16%程度で、円安の景気浮揚効果はそれほど大きくはない。日本は内需主導経済である。よって円安誘導は誤り。円高こそが望ましい。 【消費増税について】 消費税には逆進性があり、消費税率は上げるべきではない。 【日銀の役割について】 日銀はリーマンショック以前からかなりの量的緩和を進めており、米国FRBなどが行なった金融緩和は日銀の働きかけによって広まったもの。白川前総裁の手腕を疑問視する声もあったが、白川氏がいたからこそ3.11の東日本大震災の後の円の価値は維持されたのであって、むしろ氏の手腕は高く評価されるべき。 【アベノミクスについて】 アベノミクスなど、谷垣さんが前から言っていたことであって、目新しい政策ではない。インフレ期待を喚起し、今100円で買えるものが来年確実に値上がりするから今のうちに買わせようというわけだが、問題はそれが消費者が元々買いたかった商品かどうかである。今の消費者の嗜好は多様化しており、自動車や住宅が来年になったら値上がりしているから今のうちに買っておこうとすんなりとはいかない。インフレ期待による景気浮揚効果はそれほど期待できない。 【日本ブランドについて】 我々が思っている以上に、外国は日本ブランドを評価している。日本に来る外国人観光客は多いし、価格が高くても日本製品を購入したいという外国人も多い。ガラパゴス化しても日本の良さをもっと強調していくべき。 ―――こんなところでしょうかね。この手の本は旬を過ぎると面白さが激減するので、今読むべきかと思う。この著者は周囲の論者や政治家、官僚などがみんなバカに見えるらしく、「お前らわかってねえよ」というニュアンスがプンプン伝わってくる。(その割に、ミスター円・榊原英資氏へのインタビューは緊張されたようで、意外と馬鹿にしていても本人の前では大人しい小心者なのではないかと思える。) 但し、この本には注意も必要。TPPについては中立、というか、議論を避けているふしがある。押切もえの発言をもって世の中の若い女性の消費行動について一般化して論じようとしている点、農業のように、都合の悪いことには全く言及していない点には胡散臭さも感じる。
どうしたら本物の経済状況を見抜けるのか?巷には全く出ていない「自己防衛専門」、まさに「自衛隊」の発想に基づき、どう「魔の手」から逃れていくか、を心から考えて書いた本。特別ゲスト対談・池上彰、榊原英資、押切もえ。
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『ぐっちーさん 日本経済ここだけの話』
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