村上春樹の本は大体は読んでいると思うのだが、ハードカバーの本はあんまり買っていない。今回読んだ「ねむり」はハードカバーなんだけど、装丁の問題で単行本化していないみたいだ。ふらっとハードカバーの書棚を見ていたらあったので読んでみた。 何か読んだことがありそうな内容だったが、元々短編小説としてリリースされているものを書き直したものだったらしい。あとがきに書いてあるように、ドイツの装丁がとても良かったので、日本でも出せないかなと思ってたら出せたって言ってた。というか、村上春樹が小説であとがきとかあんまり書かないので珍しいかも。僕もあとがきって言い訳臭くて好きになれない。でも、今回はきっちり説明してくれないと出した意味がよく分からないし、書いておいてくれて良かった気はする。
絵は嫌いでも好きでもないので、それは個人の判断に任せるけど、なんとなくおしゃれな感じに仕上がってはいる。元の「眠り」をブラッシュアップしたもので、基本的な所は変わっていないらしいが、正直あんまり「眠り」の方はほとんど覚えてなくて読んだ印象が薄い。他の短編の女が男と外で会う話(ってザックリ過ぎ)とごっちゃになっていて、記憶があまり定かではないのだ。そういうバージョンアップはレイモンド・カーヴァーもしているしって書いてあった。 「眠り」は「ノルウェイの森」と「ダンス・ダンス・ダンス」を書いて成功した後のスランプを脱した時に書いたものらしい。というか、やっぱり村上春樹とはいえ、書けない時は書けないものなんだね。まぁ同じ舞台で同じような仕掛けで、同じような事をやっている小説を書いているわけではないから、そこいらは産みの苦しみというものは大きなものなんだろう。ある程度ルーチン化されているのは、仕事ではなく単なる労働だろうし。 基本、短編なのでサクッと読めた。村上春樹らしい作品ではあるね。何というか精神性を深く掘るような小説。とはいえ、短編だからそんなに深堀はしてないし、できない。きちんと網羅的には村上春樹を読んではいないけど、書き直すことに彼なりの意味があると考えれば、十分に読むに値する作品なんだろう。 元々の「眠り」は持ってたかな? TVピープルと一緒に短篇集に載っていたと思ったが、借りて読んで手元にないかもなぁ。ちょっと読み口を比較したいところだが、書いている今は確認できなかったりする。そのうち、原作は読みなおすことになるかもしれない。「ねむり」は悪くない。ただ、すぐ読み終わる割には1800円する。 ふ~ん、2010年に出てたのね。今まで存在を知らんかった。長すぎないし、村上春樹ビギナーにもいいのかもしれない。↧