本書が出版された目的は非常に明確。 筆者の会社が主催するITスキル検定の宣伝だ。 本書の後半は文字通り宣伝なので、あまり読む意味は無い。本書の価値は前半部分。日本と外国(主に米国)の人事制度の違いの紹介だ。
【目次】 まえがき本書はITスキル検定の紹介が裏の目的なので、IT業界や技術者向けに宣伝しているが、本書を読んで価値を得られる人はそうした人ではない。本書を手にすべきは人事部や経営企画部の人たちだ。 本書は日本と外国の人材採用・育成・評価の仕組みの違いについて現実を簡単に紹介している。 ちょっとでも人事をかじった人なら常識だが、日本ではポテンシャルを評価して「人」を採用するのに対して、外国では「業務」に対して必要な人員をアサインする。 この仕組が高度成長期には日本型の仕組みのほうが労働コストを低く抑えて競争力を担保していたのだが、現代では明らかに日本の仕組みは外国に比べて劣ったものになってしまっている。 ポテンシャルの評価はどうやっても完全には出来ないので、日本企業は優秀でない社員も採用せざるを得ない。また、「業務」に基づかない採用をしているので、事業から撤退しても人を切ることが難しい。「業務」の定義が遅れているので外部採用も難しいし、産休で休んでいた人は戻ってきたら遅れを取り戻すことも難しい。 日本型人事の仕組みは素人目にも破綻している。 もちろん筆者も日本の人事制度を世界標準に向けて、一気に転換することが可能だとは思っていないだろう。だが、なんとか世界標準にすりあわせて行かない限り、希望がないこともまた、わかっているのだろう。 そうした事情がわかりやすく説明されているので、人事制度を作ったり運用したりするポジションについたばかりの人などには取っ掛かりとして役に立つだろう。 後半部分は宣伝だと明らかなので、分量も大したことがなくあっさりと読むことが出来る。 現場から人事に移動した人の一冊目などには有効だろう。 ☆☆☆★(☆3つ半) 他のBlogの反応はこちら。 http://blogs.yahoo.co.jp/japanese1idiot/34181374.html http://officeitjp.blog.fc2.com/blog-entry-11.html あまりエントリなし。確かに専門家には優しすぎるし、門外漢には興味を持ちにくい。 もう少し大学の問題に厚く切り込んだほうが世間の注目は集められただろう。
序章 日本人はなぜ海外で通用しなくなったのか?
◎第1章 企業は社員に何を求めるか?
01 明確な基準がない日本企業の採用
02 競争激化する日本の大学事情
03 学生の就職活動に対する不満
04 企業にとての採用活動の悩み
05 海外の就職活動事情
第2章 企業の人材育成のあり方
01「能力主義」からの脱却
02 世界に通用するための「人材の棚卸し」
03 世界を相手にするための企業文化と人材育成
第3章 人材評価をめぐる日本と海外の視点
01 日本における企業内の人事評価
02 海外における企業内の人事評価
03 客観的で透明性の高い評価指標
第4章 ITスキル検定にもグローバル化
01 ITスキルのグローバル検定「Lxe2」の誕生と理念
02 Lxe2を人材育成・人事評価に導入する
03 Lxe2導入の効果と展望
Column 教育と評価の双方に画期的なプロジェクト「Lxe2」
……Curriki 会長兼CEO キム・ジョーンズ
あとがき
巻末資料 海外の主要IT企業の求人一覧