■ヒトコト感想
長大な物語のラストは、衝撃的すぎる。今まで物語中で謎であった犯人がここで明らかとなる。当然犯人は思ってもいない人物だ。幼いころトラウマを抱え、それを払しょくできないまま大人になる。どんなに社会的に認められようとも、心の奥底から認めてもらいたい人には認めてもらえない。モウルとジラフと優希。
過去、霊峰でどんな事件が起きたかもはっきりと明かされるのだが、それさえも、当たり前に想像した通りの筋書きとはならない。最後の最後で、読者が想像もしない方向へと物語を動かしていく作者の筆力はすばらしい。ただ、予想と一致していたのは、暗く悲しい物語になるということだ。三人の中で微かに幸せをつかもうとするシーンが最後にあるのが、唯一のすくいかもしれない。
■ストーリー
母に続き弟まで喪ってしまった優希、母と優希への愛情にもがき苦しみ続けた笙一郎、そして恋人を殺害されてしまった梁平。三つの無垢なる魂に最後の審判の時が訪れる―。十七年前の「聖なる事件」、その霧に包まれた霊峰に潜んでいた真実とは?“救いなき現在”の生の復活を描き、日本中に感動の渦を巻き起こした永遠の名作、衝撃の最終章。