著者は大学卒業後パチプロやサラリーマンを経て、30歳で医師を志した方で、その経験を元に小説を書いているそうな。
だから病院の様子や医学生、研修医、医師たちの生活の描写などは詳細です。
日常エッセイ風な研修医の生活を描いたもので、そのなかで考えたことや気が付いたこと、ちょっとした事件などが語られる。
大学病院というところは、教授を中心にまわっているところは「白い巨塔」の時代から変わらない。
教授回診はいまも行われているし、それに医師たちが振り回されている様子がかかれている。
主人公は患者とむきあうよりも、研究や論文、カンファレンスにあけくれて、データばかりみている医師たちの態度に疑問をもっている。
診察のほとんどは研修医がおこなっていて、指導医でさえ、あまり病棟に姿をみせない。
研修医の生活は土日なし、早朝から深夜におよぶ厳しいものなうえ、給料は低いのでアルバイトに精をだすものが多い。
大学病院自体が給料はあまりよくないので、普通の医師もアルバイトをするひとが多い。
製薬会社は医師たちにワイロとまでいかないまでも手厚くする。
研究や論文に夢中で患者をみない医師は多い。
お互いを先生と呼び合うもの主人公には疑問。
ナースや患者、その家族に対して、主人公が淡いスケベ心をもつところとかもちょっぴりかかれる。
半年の研修を通して主人公は患者に寄り添う医者になる決心をする。
一応小説なので、ネタバレになるので、続きを読むときは気を付けて
37歳で研修医となった主人公は、大学病院の分院での半年の研修をおえて、本院の第5内科に半年の研修にやってくる。同僚の研修医たちのこと、指導医や医師たちのこと、病棟長、ナースたち、患者やその家族とのかかわりのなかでおこるちょっとした出来事が4話にわけられて語られる。
第1章 脱サラ研修医がやってきた
期間着任から正月まで。大学病院とはどういうところかとか、医師の生活とか、主人公が患者の家族からの「メリークリスマス」の一言で癒されるところとか、激務でたまの休みは風邪で寝込んだ正月などが描かれる
第2章 患者にいちばん近い医者
研修医仲間下田のナースにちょっかいだす様子。主人公もナースに誘われて呑みにいき、ちょっとした三角関係になりかねなかったり、患者のなかで自分で酸素マスクをはずし、死をえらんだ人がでて、命の尊厳を考えさせられる。
主人公は患者に寄り添うことを第一にしたいと考え、カンファレンスなどは極力さぼるようになる。他の医師たちからは批判をうける。
患者の家族が主人公の誕生日を祝ってくれる。
第3章 不思議の国、大学病院
久しぶりの友人とテニスを楽しんだ主人公だが、激務の毎日を告白し、同情されるかとおもったら、「寝不足の医者にみてもらうのはいやだ」といわれ、はっとする。
そして患者によりそう医者になる決心をする。
仕事では研修医仲間が他の医師のあまりのずさんさを教授へのカンファレンスでぶちまけるという事件がおきる。
空き時間に分院の患者を訪問すると、二時間前に亡くなったといわれ、愕然とする。
病院には若くてきれいな患者がはいってきて、ちょっとときめいたり、新薬の説明会で製薬会社の接待(弁当)を断ったり。
ある日自転車泥棒と間違えられて大雨のなか職務質問をうけ、自分もこんな風に無神経な説明を患者にしていないか反省したりする。
第4章 患者に心癒されて
夏休みに他の研修医の患者をひきうけてひどい目にあったので、春休みはとらず、そのかわり他の研修医の患者はひきうけないと交渉するもうまくいかない。それならばと、患者の娘さんがきれいな人の担当になり、娘さんとは仲良くならなかったが、夫人とはとても仲良くなる。
その後担当は終わったが、夫人には頼られる。その後患者が食べられないので胃にチューブを通そうという話になるが、夫人はなっとくできない。実は担当医は検査結果だけで判断し、実際に食事をさせて確認していなかったのだ。
夫人に相談された主人公は、自分の感想を伝え、夫人は担当医たちに、もっと患者をみてくれと訴え、食事のテストが行われ成功する。
主人公は研修後の就職先の紹介を断り、しばらく休むことにして病院を去る。
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