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戦後韓国と日本文化 「倭色」禁止から「韓流」まで

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戦後韓国と日本文化――「倭色」禁止から「韓流」まで (岩波現代全書)

金金 成玟【ミン】/著
出版社名 : 岩波書店(岩波現代全書 045)
出版年月 : 2014年10月
ISBNコード : 978-4-00-029145-3
税込価格 : 2,376円
頁数・縦 : 239p・19cm


 戦後の韓国における日本文化(倭色)の「禁止」「否認」「開放」の歴史を通じて、文化面での日韓関係を読み解く。

【目次】
序章 「禁止の時代」と日韓

第1部 「日本大衆文化禁止」の歴史的条件
 第1章 「倭色」の意味と「禁止」の形成
 第2章 メディアとしての「アメリカ」と「禁止」の交錯

第2部 「日本大衆文化禁止」の時代
 第3章 「電波越境」の重層と「禁止」のメカニズム
 第4章 「メディア」をめぐる欲望と「禁止」の再生産

第3部 「日本大衆文化禁止」の解体過程
 第5章 「グローバル化」の拡張と「禁止」の転換
 第6章 「文化交流」の遂行と「禁止」の方向

終章 「禁止のメカニズム」は越えられるか

【著者】
金 成玟 (キム ソンミン)
 1976年韓国・ソウル生まれ。ソウル大学校言論情報学科修士課程修了、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。東京大学大学院情報学環助教、ジョージタウン大学大学院訪問研究員などを経て、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授。専門はメディア文化研究、国際地域文化研究。

【抜書】
●開放空間(p12)
 1945年8月15日……朝鮮半島の「開放」。
 1945年9月9日~……米ソによる南北分断統治が開始され、米軍政による統治。
 1948年8月15日……単独政府樹立。
 この「開放空間」の状況を的確に表す言葉として、「混沌」と「境界」がある。

●倭色一掃プログラム(p18)
 李承晩初代大統領時代、「倭色一掃」のプログラムが実施されていた。日本帝国からの脱植民地化。
 倭色……映画では、「日本映画の模倣」「日本語」「日本の衣装や風俗の映画化」を「倭色」と規定。さらに、「倭音楽の効果録音」も禁じられた。
 〔体制順応的でかつ愛国的な「国民」をつくりあげるための言説装置として、反共と反日が微妙に結合したナショナリズム言説を積極的に利用した李政権は、しかし一方では、植民地協力者を国家機構の核心的勢力として登用していった〕。(林志弦「韓半島民族主義と権力言説――比較史的問題定義」『唐代批評』第10号、2008年、pp198-199)

●朴正熙政権(p30)
 朴正熙は、植民地時代に満州軍官学校を卒業し、日本陸軍士官学校を経て満洲国軍歩兵第八団の少尉だった。日本に対する強い親しみを抱いていたとされる。
 西部劇とサムライ映画が好きだった。日本映画の輸入が禁忌だった当時、日本に派遣されていた中央情報部要員らは、見ごたえのある映画やTVドラマを外交パウチ(行囊《のう》)を通じて青瓦台に送るのが重要な任務の一つだった。朴大統領は、夏休みに別荘で鑑賞していた。(「青瓦台秘書室」『中央日報』1992年9月25日)
 1965年、日韓国交正常化。

●釜山(p63)
 1876年、釜山の開港と同時に長崎、五島、対馬と釜山をつなぐ航路を通じて日本人が移住。
1911年、「日韓併合」の翌年には、釜山人口約4万7000人のうち日本人が2万5641人を占めていた。
 独立後も、「日本帝国の残滓が残され続ける代表的な都市」と認識されるほど、もっとも日本の影響を受けた。
 「境界的な空間」「電波越境」……〔日本の放送の視聴が釜山の特殊なメディア・都市空間を構成すると同時に、その内容が学習・模倣されることによって韓国の放送全体に多大な影響を及ぼしたのである。つまり「近代化の尺度」として、開発独裁政権による「政治的手段」であった韓国のテレビ放送にとって、日本からの電波越境(スピル・オーバー)は、「文化的浸透」として批判されると同時に、米軍のAFKN放送とともに重要な「モデル」として受容されていったのだ。〕
 19時から21時までの間に日本のテレビを視聴する人は22%。その中には、日本語能力のない人が50%。1971年10月から実施された「日本のテレビが釜山地方市民に及ぼした影響」に関する研究結果(1973年4月21日「韓国新聞学会発表会」にて)。

●否認のメカニズム(p89)
 否認のメカニズム……「境界構築(ボーダリング)」と「境界侵犯(トランス・ボーダリング)」が共存する「日本大衆文化禁止」の過程。60-80年代の「日本大衆文化受容」の在り方。
 多くの日本の文化コンテンツが、国籍の隠蔽、脚色、翻訳、模倣、修正などによって「歪曲」され、「倭色」を払拭した形で流通していった。
 〔開放空間や五〇年代にかけて作動していた日本大衆文化をめぐる「排除のメカニズム」は、この「倭色」という言説空間を中心に、「否認のメカニズム」へと転換していったからである。さまざまな日本の大衆文化が越境するなかで、「検閲」の対象となる「倭色」に対する除去、隠蔽、修正、すなわち「歪曲」をつうじて、日本大衆文化による「境界侵犯」を「否認」することが可能になったのだ。

●日本大衆文化禁止法(p96)
 「日本大衆文化禁止」には、「日本大衆文化禁止法」のような、「日本」を明示した具体的な法令があったわけではない。その法的根拠を一般の大衆文化関連法令をつうじて断片的に探さなければならなかった。

●宇宙少年アトム(p101)
 歪曲の例。
 鉄腕アトム……『宇宙少年アトム』。70-80年代、韓国産として認識されていた。
 タイガーマスク……トム少年の成功話。アメリカ産?
 マジンガーZ……「アメリカ産の空想科学マンガ映画」として紹介される。
 荒野の少年イサム……『西部少年チャドリ』。
 昆虫物語みなしごハッチ……『ヘチの冒険』。

(2015/1/3)KG

〈この本の詳細〉
honto: http://honto.jp/netstore/pd-book_26389294.html
e-hon: http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033161512
 


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