芥川賞 受賞作品なんて読むのは多分初めて。受賞時の会見で話題になりましたからね、そしてそこまで難解ではないとの書評が多かったので文庫版を読んでみることにしました。
父子の性行為中の暴力の連鎖を描いた作品で、全体に重い空気がのし掛かるような話でした。“血は争えない” それに抗おうとして抗えない息子の苦悩、結局は自分ではその殻を喰い破ることはできなかったんですが、それでも少年から大人への一歩を踏み出すことができた、得意なシチュエーションではあっても一種の成長小説だと受け取りました。芥川賞受賞に相応しいかはわたくしめにはわかりませんが、決して難解な純文学とは思いませんでした。この作品、映画化されるってですね。青山真治 監督ですって、それはちょっと観てみたいですなあ。
それと「第三地層の魚」という作品も収録されていましたが、これがなかなか良かった。曾祖父の死を経験する小学生の話ですが、少年の嬉しいのか哀しいのかよくわからないグルグルとした気持ちを描いてあってとても爽やかな作品でした。表題作と同じ成長小説なんですが、対称的な2作品の取り合わせは高評価です。
どちらの作品も100頁くらいですぐ読めますので、興味があれば読んでみていいんじゃないでしょうか。
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「共喰い」
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