Quantcast
Channel: So-net blog 共通テーマ 本
Viewing all articles
Browse latest Browse all 53333

フランスの「文化外交」戦略に学ぶ 「文化の時代」の日本文化発信

$
0
0
フランスの「文化外交」戦略に学ぶ―「文化の時代」の日本文化発信

渡邊啓貴/著
出版社名 : 大修館書店
出版年月 : 2013年5月
ISBNコード : 978-4-469-25083-1
税込価格 : 1,785円
頁数・縦 : 255p・19cm


 在仏日本大使館で広報文化公使を務めた著者による、フランスと日本の文化外交論。軍事行動を伴わない「非伝統的安全保障」に重点が置かれるようになってきた現代国際社会において、いかに文化外交が重要であるかを説く。実例を多数紹介し、具体性に富んでいる。

【目次】
第1章 フランスから学ぶ文化外交
 なぜフランス文化外交なのか
 フランス文化外交の伝統
 戦後文化外交体制の確立
 フランス文化外交の危機感と躍進―「フランス院」の誕生
第2章 日本文化外交の射程―日仏交流一五〇周年で花開いた文化外交
 日本伝統文化芸術の祭典
 人の交流―知的交流と自治体交流
第3章 「文化の時代」の日本外交の転換点―日本文化外交の過去と現在
 「文化の時代」の日本外交
 パブリック・ディプロマシー
 日本の文化外交の歴史的盛衰
 経済大国から文化大国へ
 多様性と総合的理解
 目指すは「ブランド」としての日本文化
第4章 日本文化外交の未来
 フランスにおける日本語教育振興
 クール・ジャパン
 文化外交の体制構築
終章 今後の日本文化外交への提言
 文化外交のターゲット
 文化外交の現場
 外交べたの日本人気質
 官僚機構の中の新たな文化外交の模索―周年事業計画とリソース・組織論理

【著者】
渡邊 啓貴 (ワタナベ ヒロタカ)
 1954年生まれ、現在、東京外国語大学大学院教授、同大学国際関係研究所長。専門は、国際関係論・フランス政治外交論・ヨーロッパ国際関係史・文化外交論。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業。東京外国語大学大学院地域研究科修士課程修了。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。パリ第一大学大学院国際関係史研究科博士課程修了。『外交』『Cahiers du Japon』編集委員長、在仏日本大使館広報文化公使、日仏政治学会理事長など歴任。

【抜書】
●日仏交流150周年(p40)
 2008年は、日本がアメリカ・イギリス・フランス・ロシア・オランダの5カ国と安政の通商条約を締結してから150年。150周年記念事業が多数企画された。

●ブローニュの森の木曽民家(p76)
 2010年9月、ブローニュの森の中の「環境・風土適応公園」に、150年前の木曽の木造民家が復元された。
 日本民族学研究者のジャーヌ・コビー氏が1999年に木曽に住む知り合いの高齢の女性から譲り受けたもの。

●非伝統的安全保障(p90)
 国際政治学の安全保障分野での議論。
 軍事的対応=伝統的安全保障。
 非軍事的対応=非伝統的安全保障。
 人間の安全保障……〔国際社会による安全保障概念(セキュリティ)の対象が、国のレベルから個人に対するレベルにまで深化している。多様な情報を共有することを通して人々はリスクを避け、合意のために思考・行動様式の相互理解のレベルを向上させるようになったのである。〕

●磁器(p122)
 浮世絵より早く、19世紀以前に西欧に出回っていた日本の美術品=磁器。
 磁器は、もともと中国で開発された。ヨーロッパ各地の王族や貴族によって愛好されていた。
 日本での磁器の生産……16世紀後半、秀吉の朝鮮出兵により、朝鮮から連れて来られた陶工たちが中国風の有田焼を作るようになる。
 中国の明が亡び、磁器の輸出が停止してしまった。そこで、中国の代わりに日本が磁器を輸出し始めた。1650年頃。このころ、古伊万里、色鍋島、柿右衛門などの作品が生み出された。

●バロン薩摩(p130)
 薩摩治郎八。日本一の木綿問屋の3代目。
 第一次大戦後の1920年、19歳の秋にイギリスに留学。1922年にフランスに渡る。
 〔自前で乗用車を作らせて、家紋を入れ、美しいフランス人モデルと恋に落ち、颯爽とパリの社交界で名を馳せた。〕
 1929年、パリ国際学生都市に「日本館」を建設した。俗称薩摩屋敷。当時のフランス文部大臣アンドレ・オノラが留学生のための宿泊施設の建設を提唱、これに応じた。

●フランスの出版事情(p184)
 2010年の統計。出版総件数:67,278件(内商業出版63,052)。総売り上げ30億ユーロ弱。
 小説23%、児童・青年向け15%、余暇・旅行・実践もの14%、BD(バンド・デシネ。会話付きのコマ割り絵本全般)・コミック部門9%(内マンガは3%)。売上高。
 翻訳書では、全体の59.1%(5562冊)が英語、第2位は日本語の10%(939冊)。マンガも含む。

●Japan Expo(p188)
 毎年7月初め、パリ郊外の広大なイベント広場(9万㎡)で、日本アニメを中心とした「ジャパン・エキスポ」が開催される。
 2012年で11回目、20万人の来場者。スタンドの数は600店、企画数は650(2010年)。最初は、小学校の校舎を利用して開催、3000人の来場者しかなかった。
 アニメ・マンガ・DVD等の商品販売・見本市を中心として、さまざまな日本関連のイベントが繰り広げられる。参加型見本市・夏祭り。
 イベントを盛り上げているのが、中・高校生を中心とするコスプレ。参加者の3分の1が、マンガ・アニメのキャラクターの格好をまねたファッションで会場に乗り込んでくる。

●ウォーム・ジャパン(p208)
 2010年2月、国際交流基金文化交流研究委員会による報告書・提言書『二一世紀、新しい文化交流を』。
 「クール・ジャパン」の次に、「優しい日本の社会と文化」=「ウォーム・ジャパン」を提唱。
 〔農漁村文化、生活文化、生命の思想、価値観、知恵、思いやり、たたずまい、自然観、死生観など、ある種「癒しの文化」であり、それは現代広く世界が求めているものである。〕

●最大動員方式(p232)
 〔日本の官僚機構では専門家の養成を嫌う。ジェネラリストの育成に力を入れる。最大動員するにはこれが便利だが、結局、専門家集団ではない。したがって、個別の仕事を判断する能力がない。そこで前例にならった対応が無難と考えるようになる。要は、集団主義が従来社会生活の基本理念となっている日本のような社会では、新しいことをやることはそれが論理的に正しいことだとしても、実際にはなかなか実現が難しいのである。〕

(2013/8/3)KG

〈この本の詳細〉
honto: http://honto.jp/netstore/pd-book_25576477.html
e-hon: http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032917994


Viewing all articles
Browse latest Browse all 53333

Trending Articles