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東浩紀×小熊英二『真剣に話しましょう』②

真剣に話しましょう② 東浩紀×小熊英二 どう“社会を変える”のか―風営法問題、官邸前抗議、ヘイトスピーチ、総選挙…… 今、「リベラル」は何をすべきか Image may be NSFW.
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真剣に話しましょうの要約2回目です。2回目ですが、本書の中で第2章の位置にある対談ではありません。というのも、僕にとって印象に残った対談を優先して紹介しているため、本での順番と僕のブログでの順番が入れ替わっているからです。 さて、今回のゲスト、東浩紀氏の紹介を軽くしたいと思います。 東浩紀(あずま・ひろき) 1971年生まれ。作家・思想家。ゲンロン代表取締役。 東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。 専門は現代思想、情報社会論、表象文化論。メディア出演多数。 著書に『存在論的、郵便的』(新潮社、サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社、三島由紀夫賞)、『一般意思2,0』(講談社)。編著に『福島第一原発観光地化計画』(ゲンロン)などがある。(すべて本書から引用) というわけで対談の要旨をざっくり要約していきたいと思います。

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「ノイズのある社会は可能か」 風営法問題という切り口から 小熊「運動においては①政策的な問題を設定して、それに即して手段を考える②目的達成のために人々が参加して、それを通じて成長していくという、2つの次元でものを考える必要がある。風営法に関しては、法改正という目的のためにデモ、ロビイングという手段が考えられるが、手段を巡って対立しても意味が無い。ロビイングにもデモンストレーション的な要素はあり、手段を柔軟に考えて併用していくべき」 「風営法改正運動で問題になるのは、潔癖な社会ではなくてノイズがある社会をどう作るかということ。現実的には、ベストとは言えないがゾーニングで処理するしかないのでは。それは「子どもを守りたい母親」という主体に対して「合理的」な説得が力を持たないという事実からも考えている」 小熊「どういうゾーニングなのかが肝要。例えば東京の特区にだけ巨大なクラブを作るというような方向性になった場合、「そこだけは何をしてもいい」暗黒街的になってかえって危険になる可能性もある。子どもから危険を不可視にした場合何かのきっかけでいきなり危険なものにハマることも」 「それはそう。だが現実にその言説で親が説得できないということを言いたい。オタク特区を作らせず、オタクが社会とコミュニケーションを取らざるを得ない方向性に持って行くのはいいことと思う」 小熊「社会とのコミュニケーションの文脈で言えば、クラブはグレーゾーンの営業をしているからこそ近隣住民をコミュニケーションをとって、いきなり行政を呼び出されないようリスクをこまめに処理しておくべきだった。それを怠ったためリスクが大きくなり現在のような規制問題がある」 「コミュニケーションはトラブル解決の最も低コストなやり方。トラブル時の処理コストを低くするために地域社会とは付き合ったほうがいい」 クラウド型の動員 小熊「現代は犯罪組織もネットワーク型動員になっている。新暴対法でヤクザ組織は衰えたが、ゼロリスクはあり得ず、見えにくいところが集中的にブラック化するか、リスクが不可視かして不確実性が増す。きちんと可視化して向き合い、こまめに対処したほうがいい」 「クレーマーもSNSの炎上も暴力組織も右翼もデモも、全てクラウド型の動員になっている。動員の仕方は形式だから内容は関係なく、どんな内容でも入ってしまう。これは大きな問題ではないか」 小熊「一面でそれは正しい。しかし、官邸前でもと在特会では違いもある。官邸前デモはSNSで広まったのは2000人でそれ以降は口コミで集まっていた。一方「新しい歴史教科書をつくる会」や在特会は一人だけでこっそり来る人達。口コミという対面コミュニケーションはない。この違いは大きい」 「それはわかるが、問題は日本社会がある時点で、コミュニティから切り離された個人を大量に生み出したこと、その層がネット右翼等に流れており、現代でも大きなボリュームを持っていることではないか。その結果ナショナリズムが高まり続けている」 小熊「ナショナリズムだからすなわち悪いということはない。今の在特会的なそれはいいことだとは思わないが。コミュニティから切り離された個人の増加は確か。しかし物事は常に両義的で、このことからも官邸前デモに来るだけの「自由」な時間をもった30代、40代の人間を作り出した側面もある。また官邸前デモが新たなコミュニティとなって人々の対話や成長の場にもなった。在特会がこういう空間になれば在特会の在り方も変わるだろう」 リベラルな知識 「ここ10年、リベラルな知識は少数のものとなり、後退戦を強いられている」 小熊「多様化する現代において多数派はどこにもいない。また「リベラル」は漠然とした言葉。具体的なレベルでは両義的な影響が考えられるので必ずしも悪いと言いきれない」 「官邸前デモがあれほど盛り上がったにも関わらず、選挙では自民党が圧勝した。結果に解離があるのでは?」 小熊「民主党が負けるのは不可避で、自民党が負けたのは事前情報からもそれほど意外でないが、勝った自民党も保守系の地盤が弱くなり、党としてもたなくなる可能性があることを危惧している」 「大前提として、これから自民党はよほどのことがないかぎり参院選でも勝ち。しばらく政権をとると思う。官邸前デモが偉大な成果であったのは確かだが、実際の選挙では脱原発が争点化さえされなかった。官邸前デモの構図は『一般意思2.0』で書いたものだったが、本の内容と違い、現実には熟議に匿名のデータベースが影響を与えることはなかった」 小熊「東氏のほうが期待が大きかった。脱原発に限れば7割の世論が支持するが、かつてと違い、現在はTPPなど複数のテーマが相互に連関性を失った状態である。それぞれが最も興味あるテーマに着目して投票すると必ずしもデモと投票結果は一致しない。それでもデモは自民党に影響を与えているし、出発が数百人規模だったことを考えるとよくここまで達成したなという感想」 政治と儀式 「自分は政治に「儀式」を求めているのかもしれない。形式主義。脱原発の具体的目標を議論しようとすると異論が噴出して議論自体が止まる。それよりも『基本全廃』という抽象論を共有するのが政治の役割」 小熊「その気持ちは理解できる。だが、実際に日本は原発をほとんど停めてしまっている。現状、実質2基しか動いていない。これは世界にも類例がない」 「しかし、なし崩しに2基しか動いていないことの意味付けをしないと、長期的にはどうなるかわからず駄目だと思う。ヨーロッパはこの点をしっかりしている」 小熊「なし崩しではなく運動と世論と政治の成果である。日本のこの2年の出来事は本当はすごいこと、稼働原発を2基にしてしまったことも、官邸前デモに毎週数万人集まり代表者が首相に会ったことも、世界的に例がない。すごいことをやっているが日本ではその自覚がない。儀式が欲しいというのも分かる」 「儀式なしでは民主主義が成立しない」 小熊「それは冒頭の自分の言葉では②目的達成のためにみんなが参加してそれを通じて成長していくという次元の話。確かにそれがないと政治・運動に対する無力感が広がる」 「日本では99まで成果が積み上がるが最後の1ピースがいつもない。ある種のビジョンを立ち上げ、99の積み上げをどう名付けるか、が大切。自分がやっている「福島第一原発観光地化計画」もその一環でなし崩し的にいこうとしている部分をきちんと区切ろうとしている」 おわりに 小熊「東氏は自分よりも「リベラリスト」というか「モダニスト」というかドラマ志向だと感じた。自分からすれば、社会の変化と変化の物語は別のもの。とはいえ物語の必要な部分がある所は共有できる。意見が異なる部分もあるが、結果的には近く、東氏の仕事は尊敬している」 「小熊氏の仕事は尊敬して追ってきたつもりだったが、昨年末の総選挙結果をリベラルの敗北だとは思わないという言葉には驚いた。正直納得できかねるところもあるが、持ち帰って考えてみたい」

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「感想」 小熊氏の他の著作をまだ読めていないのですが、東氏の著作はあらかた読み終わっているので『一般意思2.0』との関連の話しに興味がありました。官邸前デモ、僕自身は行きませんでしたが、学部時代に同じゼミの人が行ってましたね。チラシを掴まされたこともありました。匿名のデータベースが囲む中での熟議が具体化した形であったということです。氏は著作の中では議会をニコニコ動画で生中継するような形を想定しておられましたので、熟議中の人がリアルタイムでデータベースを参照できるかどうかという同時性の面で多少の差はあったかもしれませんね。データベースを参照できるのは議会に入る前と議会が終わった後であるので、熟議中はデータベースにアクセスしないオフライン状態に置かれていたとも考えられます。

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