中村さんらしい心温まる恋愛小説です。 やや出来過ぎな感がなくもないのですが、杏奈の一途さが打ち消してくれます。 書店員・光には、絵本作家になりたいな、という漠とした夢があった。恋に関しては、だいたい相手から告白されて付き合うが、「やさしいんだど……」といわれて最終的には終わってしまうパターンが続いていた。そんな光には、「デビル・クロース」、略して「デビクロ」という謎キャラに変身して、「デビクロ通信」なるイラスト入りのメッセージを添えた手製ビラを、ポストなどに無差別に撒くという意外な一面が。そんな光に思いを寄せる実家の鉄工所で働く溶接女子の杏奈の好意に気づくことなく、ある日、光は彼女に運命の人が現れた話を嬉々としてしまうのだが――。 この冬読みたくなる、ミラクルなラブストーリー。 (「BOOK」データベースより) シンプルなストーリイなんですが、ただシンプルなだけにしない中村さんのうまさがありました。光のキャラクター造形と恋の行方、光と杏奈をはじめとする登場人物たちの想いなど。 ただ、惹句の「ミラクルなラブストーリー」は言い過ぎです。 構成がよく考えられています。物語の導入部と結末だったり、最終的なデビクロ通信の発行数だったりと。ラストシーンで「ああ」と気づいたのですが、深い企図が感じられます。それが温かな読後感にもつながっていると思います。 光がイタすぎて中盤は読むのがキツかったです。 却ってなのか、杏奈のプラトニックな心情や、光の誠実さとデビクロくんの背負った闇のコントラストがよくて、終盤はぐっときました。 そんなこんなの結末はハッピーエンドで終わって、読後感はよかったです。 映画化されるそうなんですが、色々な部分でなんか違うような…。 http://miracle-movie.com/
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