ど~も。ヴィトゲンシュタインです。 筑波 昭 著の「津山三十人殺し」を読破しました。 半年ほど前から突然、古尾谷雅人主演の「丑三つの村」が観たい・・と思い始めました。 本書の津山三十人殺しを描いた1983年の映画ですが、 この大量殺人事件を描いたものとしては1977年の「八つ墓村」も有名ですね。 いろいろと調べてみると、この事件そのものを詳しく知りたくなり、 「丑三つの村」を観る前に、まず1981年刊行後、加筆・修正されて2005年に再刊された 364ページのノンフィクションを読んでみることにしました.。 寅さんとショーケンの「八つ墓村」は子供の頃にTVで観て以来、5回以上は観ています。 なんといっても前半の落武者が殺されてさらし首に・・というシーンと、 ラストシーンで山の上から八つ墓村を笑いながら見下ろす落武者が怖かったですねぇ。 最近流行の「影武者」を知ったのは黒沢明ですし、「落武者」ならこの映画です。 そしてショーケンの父が頭に懐中電灯2本、日本刀と猟銃で村人を惨殺する回想シーン。 容赦なしっていうか、ハリウッドの西部劇でもあんなに女子供を問答無用に殺しませんから、 物凄いインパクトがありました。「祟りじゃ~」も流行りましたね。 鍾乳洞で犯人だとバレた小川眞由美がショーケンを殺そうと追いかけるシーンも恐ろしかった・・。 この小学生当時、もしロードショーで観てたら、本当にオシッコちびってたような気もします。 その後、村人30人殺しのシーンが実話だったということをなにかで知ったわけですが、 ひょっとすると、「皆様方よ、今に見ておれで御座居ますよ・・」で知られる 「丑三つの村」が公開された時なのかも知れません。 この映画、なんで観に行かなかったのかな?? と考えてみたら「R-18」指定だったようです。 前置きが長くなりましたが、本書は2部構成になっており、第1部は「事件」です。 昭和13(1938)年5月21日に岡山県の集落で起こった大量殺人事件。 事件を伝える朝日新聞の記事に、駐在所の巡査が提出した詳細な報告、 22歳の犯人、都井睦雄が犯行前にしたためた遺書全文などが淡々と掲載されます。 その遺書には自分の病気を肺結核と信じ、近所の2人の女性に対する恨みつらみが・・。 そして自分が精神異常者ではなく、覚悟の死であることも強調します。 また、数年前に嫁いだ姉と、からくも難を逃れた関係者たち、 特に睦雄の遺書に名前を挙げられていたマツ子らの当時の供述も印象的です。 105ページから第2部の「犯人」へ・・。 大正6年生まれの都井睦雄の生い立ちが1歳ごとに章になっている構成で、 2歳の時に39歳の父が肺結核で死去すると、翌年には24歳の母が同じ病気で・・。 後見人となった祖母と3つ年上の姉との3人暮らしで成長します。 小学校では成績も優秀、しかし16歳の時、肋膜炎となり、自宅静養を言い渡されます。 卒業後、自宅の農家の手伝いもせず、ブラブラと過ごす睦雄。 19歳となり、1つ年上の唯一の友人から「大阪で女を紹介してやる」と言われ、 娼婦を相手に童貞を喪失。 すっかりエッチにハマってしまった睦雄は部落内の人妻、マツ子に「関係してくれ」と迫るのでした。 本書では事件の2年前、1936年に東京で起こった「阿部定事件」を大きく取り上げています。 エッチの最中に絞め殺して、チンチン切り取っちゃった・・というあの有名な事件ですね。 睦雄はこの事件に大変興味を示し、安倍定の調書の地下出版本を写し取るほど。。 おぁっ、ついでタマタマも切り取ってんのか。。 この事件、考えるだけで下半身がムズムズするので調べたことはなかったんですが、 1976年の「愛のコリーダ」ってコレが題材だったんですねぇ。 藤竜也は好きですが、いや~、こういう映画は苦手です。。 どっちかって言えば、クインシー・ジョーンズの「愛のコリーダ」の方がイイ気持ち! 実はレビューは書いていませんが、同じように女性による殺人事件、 「毒婦伝説―高橋お伝とエリート軍医たち」という本を2ヵ月前に読んでいまして、 この主役の高橋お伝とは、明治時代に剃刀で男を殺して、斬首刑になった女性です。 興味深かったのは、その彼女の遺体、特に陰部が切り取られてホルマリン漬けに・・、 そしてその行方を追う著者が、存在するとされる東大に単身乗り込むという部分です。 なぜかというと、ヴィトゲンシュタインが子供の頃からの遊び場だった東大構内には 当時、通称"ミイラ館"と呼んでいた小さい2階建ての建物があり、 そこにはホルマリン漬けにされた「何か」が沢山あったんですね。 真昼間に度胸試しで入った友達も泣き叫んで出てくる・・という恐怖の館。。 去年、たまたまソレを思い出して、記憶を辿ってその建物を探したり・・。 なので、ひょっとしてあの"ミイラ館"に高橋お伝が・・と読んでてドキドキしました。 おおっと、かなり脱線してしまいましたので、話を本書に戻しましょう。 21歳の睦雄といえば、趣味はエッチといった趣で、完全にサカリがついています。 まるで生きがいかのように、あちらこちらに夜這いに出かけ、 ある晩、18歳の娘に夜這いを仕掛けたところ、運悪く母親に見つかってしまいます。 そんなピンチも「ならばあんたでもいいわい」と、その母親に乗り換えるという変わり身の早さ。 もはや、「穴があったら入りたい」ならぬ、「穴があったら入れたい」状態ですね。。 当時、このような部落では夜這いはある程度「文化」でもあったようで、 ここでも睦雄だけの仕業ではなく、旦那にバレても酒を持って謝れば解決という大らかさ。 しかし戦争が始まっているこの時、若い男が病気だと言って出兵もせず、 夜な夜な情交に耽っていれば、悪口と良くない噂が広がるのは避けられません。 やがてブローニング12番口径5連発猟銃を購入し、コレを9連発に改造。 弾は猛獣用のダムダム弾で、日本刀なども手に入れた睦雄。 こうして部落内の自分の敵を抹殺する計画が粛々と進み、 昭和13年5月21日の午前1時ごろ、遂に凶行が始まります。 まずは育ててくれた祖母が不憫だと、その首を斧で一撃のもとに切断。 そして家を飛び出すと、頭に2つ、胸に1つの電燈を光らせた3つ目の悪魔は、 2時間の間に老若男女30名を殺害し、3名に重軽傷を負わせるのでした。 この犯行場面は非常にリアルかつ詳細を極め、各家の間取りも掲載しながら、 睦雄がどのように侵入して、ナニを喋り、誰をどのように殺したかを描きます。 岸田家の70歳のたまばあちゃんは「頼むけん。こらえてつかあさい」と哀願。 「ばばやん。顔をあげなされ」と銃口で顔をすくい上げてズドン! 「八つ墓村」の山崎勉にも勝るとも劣らない迫力ですね。 凶行後、山へと逃れ、再度、簡単な遺書をしたためた睦雄。 猟銃を胸に当て、両手で銃身をしっかりと握り、右足の親指で引金を・・。 その瞬間、猟銃は3尺ほど吹っ飛び、睦雄は即死。 結核による絶望と部落民への憎悪、そして「安倍定に負けないような、 どえらいことをやって死にたいもんじゃ」と語っていたとされる睦雄の自己顕示欲・・。 これらが空前絶後の大量殺人の動機だと推測しています。 本書を読んでる最中に山口県周南市「5人連続殺人事件」が起こりました。 山間にある集落の4棟の民家が次々と襲われたこの事件。 なんだか似たようなことが起こったなぁ・・とニュースを見ていました。 今のところ詳しい動機と被害者たちの軋轢などの関係はわかっていないようですが、 タイミングといい、なんとなく不思議で複雑な心境です。 読み終えて、早速amazonに「丑三つの村」のDVDを注文。 昨日、ちょうど届いたところです。 今日にでも観ようと思いますが、睦雄を演じた古尾谷雅人も自殺してるんですよね。 う~ん、あまりそういうことは気にせず、映画として楽しんでみたいと思います。 若い田中美佐子も出てますしね・・。
↧