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「笑うカイチュウ」 : 進化の神秘としか言いようのない生き様だ、奴らは

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笑うカイチュウ (講談社文庫) 1994年刊行。その後、1999年に文庫化。私が読んだKindle版は文庫になったものが元になっている。

★ 概要 : 今はさらに寄生虫天国になっている?

国を挙げて行った寄生虫撲滅の取り組みによって、一時は寄生虫症は激減した。だが、自然食ブームや海外渡航者・海外からの訪問者増加などによって、寄生虫に感染する人が増えている。 しかも、一時は姿を消したこともあって、寄生虫症を知る医師が激減。さらには教育機関(医大など)でも寄生虫研究(者)は減る一方。ちゃんとした診断をすることができなくなっている。 そんな寄生虫だが、長い歴史の中で人と寄生虫との間にも共生関係ができているらしい。アトピー性皮膚炎や花粉症は、特定の抗体とアレルゲンが結合して引き起こされる。ところが、ある種の寄生虫は、人の身体の中で無事に過ごすため、宿主(とりついた相手。つまり人間)にその特定の抗体の“変異種”を一杯作らせる。この変異種は花粉などのアレルゲンと全く結合しないタイプ。そう、この寄生虫に感染している人はアトピー性皮膚炎や花粉症にならない(なりにくい)のだ。逆に言えば、この寄生虫を駆除してしまったがために花粉症がここまで広がってしまっているとも言える。 人と共生している寄生虫は、それほど人に対して“攻撃”をしない。むしろ、一緒に生きていこうとする。では、危険な寄生虫とは何で、なぜ寄生虫症が起きるのか。それは、本来は別の生物(犬や猫、鯨などなど)に寄生している連中が、間違って人間の身体に入ってしまった時に生じる。いつもと同じ環境じゃないので、「居心地のいい場所」を探し回って、あっちこっち動き回る。そして臓器を傷つける。そんな時に激しい症状が起きてしまうのだ。 ペットと過剰なスキンシップをしたり、グルメブームや迷信による生食(蛇の生き血は滋養強壮にいい、など)によって、人と共生関係にない寄生虫を身体に取り込んでしまう。そこに危険が潜んでいる。

★ 目次

  • 第一章 カイチュウ復活、知らぬ医師
  • 第二章 寄生虫が語る僕たちへの教訓
  • 第三章 ペットかわいや寄生虫は怖い
  • 第四章 家庭より、やはり野におけ野生動物
  • 第五章 食のタブー忘れたグルメの罠

★ 感想

二十年前の作品だが古さを感じさせない。グルメブームやペットブームによって寄生虫に感染してしまう危険性は今も全く変わっていないだろう。ということは、残念ながら著者がこの本で指摘した問題点が未解決のままということでもある。もっともっと啓蒙が必要なようだ。気持ち悪がる前に、本書を読んで知識を得ねばならないだろう。 いや、きっかけはキモカワイイという感覚でもいいかもしれない。今年、創設60周年を迎える目黒寄生虫館に行って、ワイワイ言いいながら、自然と勉強し、その後に本書を読んでもいいだろう。 ちょっとオーバーに言えば、生きていく上で必須の知識だ。読むべき一冊ですね、本書は。 などと言いながら、この本を読み終わった日のランチにはしっかりと刺身定食を食べちゃいました。美味しいんだから仕方ないですね?!
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Kindle版文庫版

線虫に特化した話を知りたいならばこの本がおすすめ。 残念ながら新刊は売り切れのようです。古本なら手に入るみたい。

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