花子とアンの番組自体は9月に終わり、「朝市の嫁さん」というオプション番組まで放送されるほど盛況だった。11月24日にも前後篇が放送されている。ストーリーもさることながら、どうしても「赤毛のアン」という本に興味をもってしまう。原題は「Anne of Green Gables」で1908年に出版されたモンゴメリの小説で、ドラマの中でもあったように直訳すると赤毛のアンとはならないが。原書の初版本をネットで調べると、緑を基調にした表紙で、中央に左側から見た女性の顔が描かれている。初版本は日加修好85周年記念「モンゴメリと花子の赤毛のアン」として全国の百貨店での展示会で展示されているようだが、残念ながら見にいけなかった。版によって人物の内容や基調となる色が違っているようだ。しっかりした表紙でクロス装丁と見受けられる。
本の表紙を含む装丁については、1998年作品社発行、日本の名随筆別巻87「装丁」に古今の作家の装丁談義が記載されていて面白い。また、2013年5月7日から20日の10回にわたって、朝日新聞編集委員の河村理子さん記載の記事も装丁を含む本の楽しさが述べられている。日本では日本クロス工業(現在のダイニック株式会社)が本の表紙用のブッククロスを最初に製品化している。
最近では、読書離れとか、書籍からタブレット等に読書形態が変化しているとか言われ、オリコン発表の2012年年間書籍マーケットレポートによれば、2012年の単行本や文庫本やコミックを含む書籍の出版は1兆528億円で前年から約5.4%減少したとのこと。単行本としては2012年6567億円で2009年の7498億円から1000億円近く減少している。しかし、自費出版は、発行部数は少ないものの種類が増えているため、結果として発行部数は確実に増えているようである。楽しい装丁を施したハードカバーの書籍が増えてほしい気がする。
ちょうど2014年11月15日に日本経済新聞に自家製本の記事が出ていた。簡易製本からハードカバーによる手作業の製本までの挑戦記が記載されている。いろんな素材の表紙を使用して製本していくのも本作りの醍醐味だろう。赤毛のアンでは版を重ねるごとに、その履歴がわかるよう表紙の印刷に変化を持たしている。小ロットの書籍であっても、版ごとに表紙の印刷や素材に工夫を凝らして変化を楽しめるようにしてもらうと、読者としては楽しいのだが。読書離れやタブレットなどに負けず、出版業界にも頑張ってもらいたいと願うのは、私だけだろうか。