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「仏教漢語50話」 : こんな言葉も仏教用語だったのね。そして、元の意味は全く違ったのか・・・

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★ あらすじ

仏教がインドから中国に伝来されたのは後漢の時代。一世紀後半のこと。それまで、世界の中心は中国で、文化の頂点にあると思っていた中国の人びとは驚いた。自分たちと同等の文化を持つ文明があることを知り、貪欲に仏教を吸収していく。だが、“外国語”(サンスクリット語)によるその教えを母国語(中国語)に直す(翻訳する)に当たって苦労が多かった。中国語にはない概念、新しい概念に対しては新たな言葉を作らねばならなかったのだ。 方法は三つ。➀既存の単語を“別の意味”に使ってしまう ➁意訳して新しい言葉を作る ➂音だけをまねて新しい言葉を作る(音訳)。 例えば、「仏陀(ぶっだ)」はサンスクリット語のBuddhaの音訳。元々「仏」の文字(旧字では「佛」)は「彷彿(ほうふつ)」などに使われるように、「ぼんやり」と言った意味だったのだ。音訳なので、他の字を当てられることも初期にはあった。それが「浮屠(ふと)」。ぼんやりだの、屠るだのの文字を当てるくらいなので、当時は仏教を「夷敵の野蛮な土着宗教」程度に思っていたようだ。 「塔(とう)」はサンスクリット語“stūpa”の意訳であり、音訳でもある。音訳には「卒塔婆(そとば)」もあり、同じものを指していた。また、「塔」という文字自体、このために作られた「新附字」であった。 「我慢(がまん)」はサンスクリット語"asmi-māna"の意訳。現代では、辛さをこらえて堪え忍ぶことを意味するこの言葉だが、元々は「自分の力を過信して思い上がること」の意味だった。 「玄関(げんかん)」も仏教用語。ただし、サンスクリット語ではなく、中国での造語。日本に伝わった仏教は、中国(&朝鮮)経由のため、元々のインドにおける姿・言葉から変容した形で伝わった物もあった。 玄関の元々の意味は「奥深い教えに入るための関門」であった。

★ 目次

  • 序 仏陀
  • Ⅰ 阿吽の呼吸
    阿吽 阿弥陀 韋駄天 盂蘭盆 劫 三昧 刹那 禅 僧 達磨 塔 涅槃 曼珠沙華
  • Ⅱ 前世の因縁
    因縁 火車 我慢 堪忍 空 居士 乞食 地獄 精進 睡眠 世間 殺生 寺 人間 彼岸 平等 布施 分別 方便 未曾有 無尽蔵 迷惑 流転六道
  • Ⅲ 愛の煩悩
    愛 行脚 鬼 葷酒 玄関 心 言語道断 魂魄 三尊 四苦八苦 道楽 蒲団 唯我独尊
  • あとがき

★ 感想

元は仏教関係の雑誌に連載されたものを再編した本作は、一つの言葉の説明に四ページずつ割いている。難しい内容を分かり易く、そして読み易く解説してくれているので、とても読み易い。 日頃、普通に使っている言葉の元々の意味がこんなことだったのかと知り、へぇの連発であった。「阿吽」や「刹那」なんてのは仏教関係の言葉だろうなと雰囲気で分かるが、「人間」だの「蒲団(布団)」だの、「愛」なんて言葉までもが仏教由来だったとは。昔の(中国の)人が苦労してサンスクリット語から新たな言葉を作ってまで翻訳したのに、日本に伝わると、そして二千年の時を重ねるとずいぶんと意味を変えてしまったんだなぁと、感慨深いというか、昔の人に申し訳ないというか、いろんな思いが湧きだしてきた。 そうそう、「寺(てら)」も元々は中国の役所のことだったそうだ。さらに遡って語源を探ると、「手に持つ」という意味だったらしい。それが役所の意味に使われるようになったので、「持つ」は「寺に手偏」を付けて新たな文字を割り当てたのだそうだ。こんな風に、仏教用語そのものだけではなく、それにまつわる話も満載。ちなみに「出家社の住む場所」という意味のサンスクリット語“vihāra”の意訳である「精舎(しょうじゃ)」や、“samghārāma”の音訳である「伽藍(がらん)」が本来の寺を表す言葉だったらしい。 仏教に関しても知ることができるし、言語学的な興味も湧く話題も色々。一冊で二度美味しいパターンだ。なかなか面白かった。
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