年末にも正月にも来なかった息子がようやくやってきた。 年に一度くらいしか顔を見せてくれないのだが、しばらくぶりに見ると元気そうだしなにより今回は最近付き合いはじめた彼女を連れてきていた。 「父さん、久しぶり。紹介するよ。咲子だよ」 咲子と紹介された女性はまだ少女の面影を残した愛らしい顔立ちを少し緊張させて軽くお辞儀をした。 そう、良さそうな娘だね。 思ったけれども声には出さずににこやかに笑いかけると、彼女もひと安心したような笑みを浮かべた。 最初の儀式を終えた息子はおもむろに柄杓をとりあげ、バケツの中の水を汲み上げた。 「父さん、これからも見守ってくれよ」 柄杓の水を高く持ち上げ、私の頭に静かにかける。 すっかり乾いていた墓石に与えられた水滴に午後の光が映り込んだ。 了