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『エリアーデ幻想小説全集 第2巻』(作品社)

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宗教学者としても活動したエリアーデの、表題どおりの幻想小説分野の全集です。この第2巻には1959年~1971年の作品が収録されています。何故いきなり2巻を手に取ったかと言いますと前々から気になっていた「ムントゥリャサ通りで」が入っていたからです。 とにかく一読して、巻末の池澤夏樹の解説に首がもげるほど頷いていただければと思います。こんなに読者をくらくらさせる作家はなかなかいませんよ。内田百閒の夢見がもうちょっと良くなった上で、ヨーロッパ阿房列車でもして貰ったらこんな作品が生まれそうです。池澤さんも注目の「ムントゥリャサ通りで」は、ある小学校の校長をしていた人物が数十年前に起きた事件の詳細を語る中篇です。最初はちょっとした思い出話だったはずが、何故か校長は保安警察に呼び出され、大臣と差し向かいで対話し、事件に至るまでの数百年にわたる因縁を文書として提出し…登場人物たちが値を上げるほどの脱線に次ぐ脱線の果てに、最後にはどうにか現実的な決着が訪れるものの、結末に登場する人物のおかげでまた謎の入り口が開いてしまったところで物語は終わります。 『サラゴサ手稿』のように増殖してとどまるところを知らない展開は東欧エリアの伝統なのでしょうか、読めば読むほど頭がこんがらがってくるのにエピソードの一つ一つがたまらなく面白いんですよこれが。そこかしこにちらつく共産主義政権の影に注目すればまた別の読み方もできたと思うのですが、気にしている余裕が全くありませんでした。 そういうわけで「ムントゥリャサ通りで」は本当に半端じゃなかったので、未読の方はぜひ衝撃を受けていただきたいと思います。 エリアーデ幻想小説全集〈第2巻〉1959‐1971


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