『日本人のためのアフリカ入門』 白戸圭一 2011/04
著者は毎日新聞元南アフリカ特派員。 メディアがアフリカ報道を歪めているという本。
本書での「アフリカ」はサハラ砂漠以南のアフリカ(サブサハラ)を意味する。エジプトから西サハラまでの北アフリカは、民族・文化などの面でサハラ以南とは大きく異なる。
サハラ以南の駐在している日本人記者は、3つの新聞社と1つの通信社合わせて4人。各社1人でサハラ以南48カ国を担当する。
著者が大学の探検部時代にニジェールから帰って記者会見すると、翌日の新聞には「進む砂漠化」と、前日の会見内容とは全く反対の記事がでた。この記者はアフリカ=砂漠化=飢餓 というアフリカ観に合わせて記事を書いている。日本のアフリカ報道・番組には、こうした先入観に基づいたものが多数ある。
2004年に収録・放送のあった「あいのり」という番組のエチオピアを舞台とした回では、民族紛争や貧困という先入観でストーリーが作られ、今で言う「やらせ」の内容だった。
「気の毒なアフリカ人」「日本人=善意の救済者」といった意識・知識の枠組みをアフリカ・スキーマと呼ぶ。19世紀の植民地時代から継続しているという。
スーダン西部のダルフール紛争は発生から1年経って日本でも記事になった。欧米で問題視され始めたので日本も追随した。アフリカの紛争を「部族対立」で括る報道は、アフリカに対する偏見と疑問を読者に植え付けていると述べる。
1970年の中国の1人当たりGDPは114ドル、サハラ以南では236ドルと中国を上回っていた。しかしアフリカは2000年くらいまで成長から取り残された。1993年に日本がTICADを始めたがあまり成果はなかった。状況が変わったのは2002から03年あたりから。地下資源をめぐって特に中国が進出してきたのが原因だ。
南ア共和国はサハラ以南のGDPの実に4割を占める。この地域では圧倒的な存在感だ。
内紛の続くソマリアだが、ソマリアの民間人の戦死率よりも日本の自殺率の方が高い。
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