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伊集院静著「ノボさん」を読んで

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IMG_4492.JPG 照る日曇る日第644回 「小説正岡子規と夏目漱石」という副題がついているとおり、生涯にわたって続いた彼ら2人の熱き友情を主題にしたドキュメンタリー的小説で、子規の著作や彼らの往復書簡、キーンの「正岡子規」などの内容をうまく取り入れて、著者なりのノボさんの熱く短い生と個性豊かな人間像を描き出すことに成功しています。  この作家は、例えば三島由紀夫や大江健三郎などに比べると、使用する語彙も極端に少なく、日本語の持つ複雑で多様な文型を上手に駆使しているとはいえないのですが、「これを読者に伝えたい」とのぞむ気持ちが純朴で、高い熱度を持っているために、へたウマではないけれど、それがかえって現代の読者にもすみやかに到達するようです。 ちょうど平安時代の和歌のもって回った難解なメッセージより、江戸時代の発句のほうがあやまたず人の心に届くように。この人は紀貫之ふうにいうと「心余りて言葉足らず」というちょっと奇妙な場所に立っているみたい。 これを一言で尽くせば、「技巧なき技巧の無手勝流の勝利」ですが、しかしいかに長きにわたる連載を単行本にまとめたとはいえ、ノボさんの大好きな白球がハンブルするがごとく、話柄が再三ダブったり、全体の構成がキチンとしていないのは、プロの作家としてちょっと恥ずかしいことではないでしょうか。   なにゆえに最初の文をつけたままメールを返送するのだろう失礼じゃないか 蝶人


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