佐々木丸美さんの作品は、以前「崖の館」を読んだのですが、その
時も、透明感の溢れる物語に魅かれました。
この作品も、凛とした、透明な空気が漂う物語。
私好みで、久しぶりにお気に入りの作品に出逢った気がします。
雪の断章 (創元推理文庫)
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作者: 佐々木 丸美
出版社/メーカー: 東京創元社
発売日: 2008/12
メディア: 文庫
【 story 】
大通り公園で迷子になった孤児・倉折飛鳥が青年に出逢ったのは
5歳のときだった。
それから2年・・・。引き取られた本岡家での虐げに耐えきれず飛び
だした飛鳥。そんな少女を救ったのもその青年・滝杷裕也だった。
飛鳥は裕也と暮らし始める。
月日は過ぎ、高校生になった飛鳥は、裕也、裕也の親友・史郎、
家政婦のトキ、同じアパートに住み姉のように慕う厚子らに囲まれ、
次第に傷ついた心を癒していた。
そんなとき、アパートに住む本岡家の人間が毒殺される・・・。
【 少女から女性への成長物語 】
ピュアな恋愛物語です。
いつ終わりが訪れるかも分からない裕也との生活。
“ 時間よとまれ ”
いつ終わるかもしれないと覚悟しながら、夢でないかと疑いながら、
今の幸せをかみしめ、裕也との生活を大切に思う飛鳥。
飛鳥の儚(はかな)さ、懸命さに心揺さぶられます。
そして、大人になるにつれ次第に変化していく裕也への想い。
心の奥底に秘めた裕也への想いを、静かに、大切に紡いでいき
ます。尊敬と愛情、抑えようとしても抑えきれない、溢れんばかり
の飛鳥の想いが迫ってきます。
しかし、この作品は、”恋愛物語”以上に、“成長物語”だと思います。
裕也とのことだけでなく、本岡家との関係、家政婦のトキさんとの
関係、史郎との関係や、身近で起きた殺人事件を通して、飛鳥は
さまざまに悩み、葛藤し、それを乗り越え、人生を歩んでいきます。
そんな、“少女から大人の女性”への過程における、それぞれの年頃
での“心の葛藤”を描いた成長物語なんだと思います。
そんな丁寧に描かれた恋愛と成長の物語。そして、ちょっぴり推理
小説も味わえる、そんな魅力的な私好みの作品です♪
O(≧∇≦)O ホントニイイ!!
【 +plus 】
「断章」とは、詩や文章から抜き出した一部分のことだそう。
主人公の少女が好み、彼女の心を癒してくれた白い雪。少女の
物語は、その「雪の物語」の中の一編という感じ。
タイトルの印象のとおり、透明感と清廉な、素敵な物語です。