25 マドンナ・ヴェルデ(新潮社)海堂尊 ☆☆☆ 一人娘に突然「ママ、私の子供を産んでくれない」こんなことを言われたら・・・ 日本ではまだ認められていない代理母出産に関する小説です。 桜宮市の「メゾン・ド・マドンナ」というマンションに1人で住んでいる山咲みどり。 (海堂ファンならご存知かもしれないが、極北市から桜宮市に移り住んだ桜宮小百合、南雲親子とみどりはこのマンションですれ違ている。たしか「アリアドネの弾丸」で・・・。その時小百合だけがみどりを妊婦とわかる。) マンションからは桜宮丘陵が見える。 そしてその丘には東城大学医学部付属病院が見える。 ジーン・ワルツ(読書の時間’13の21)の主人公で顕微鏡下人工授精のエキスパート、曾根崎理恵の母親が山咲みどり。 人工授精による代理母出産を依頼者(娘、曾根崎理恵)から見た話が「ジーン・ワルツ」、受託者(母、山咲みどり)から見た作品がこの「マドンナ・ヴェルデ」というわけです。 みどりの夫、貴久は、みどりが31歳、理恵が2歳の誕生日を迎える一か月前に突然の脳出血で亡くなっている。 それ以降、みどりの両親を援助を得つつも二人で生活してきた。 理恵は、東城大学医学部を卒業後、帝華大学医学部産婦人科学教室で助手をしている。 また、理恵は曾根崎伸一郎と学生結婚をした。 伸一郎は現在アメリカのマサチューセッツ大学に行っており、理恵が伸一郎の所に行った際に妊娠したのだが、理恵は先天的に双角子宮であることが判明し、受精卵が二つの子宮の双方に着床していることが判明。 そして、堕胎、子宮摘出をし、子供が出来ない体になってしまった。 その理恵から「私と伸一郎の子供を産んでくれない」と衝撃的な告白を受ける。 戸惑いながらも、子どもを産めなくなった理恵のために代理母出産を受託する。 そして理恵から「今の法律では、母親は赤ちゃんを実際に産んだ女性になる」ことを教えられる。 孫を出産する祖母。 遺伝子上の母親。法律上の母親。 日付の計算がしやすいようにと元旦に措置をする。 3個の受精卵を入れてそのうち2個が着床、妊娠に成功した。 双子だ。 妊娠後、離婚した伸一郎と理恵。 そんな娘に「子育て」に対する不安を抱き始める妊婦のみどり。 代理母を受託する際から、マサチューセッツの伸一郎と手紙のやり取りをしているみどり。 (普段から連絡方法としてメールをしようしている伸一郎は手紙が苦手らしい。意思の疎通を図るため、みどりから食事に関する記載を進められ手紙を書いた日の食事について書き始める伸一郎。これがのちに「医学のたまご」で子供とメールするときにも残る。) 出産、子供にあまりにも無関心の内容を記載する伸一郎に戸惑いながらも、みどりは生まれてくる子供の将来のために親権を主張するように説得し始める。 出産予定場所は、マリア・クリニック。 理恵が非常勤で診察している個人病院。 地域医療が崩壊しかけている中、極北市での誤認逮捕をきっかけに地域の産婦人科医の閉院に加速がついている。 理恵が尊敬している三枝茉莉亜院長だが、病気で余命いくばくもなく、息子が極北市で逮捕されてしまったこともあり、今受診中の5人の妊婦の出産を最後に閉院する予定だ。 様々な思いを持ち、出産予定日(帝王切開)が迫ってくる。 理恵が本当に子供が欲しい理由が「産婦人科医の窮状と代理母を社会に提起するためで、子供たちも後に代理母出産の子供だと公表する」だと知る。 生まれてくる子供(孫)の将来を心配するみどりは、伸一郎に親権を主張させ自分がシッターとして育てていこうと決断するみどり。 みどりの出産の日に、他の4人も産気づいてしまった。 5人の妊婦の出産に追われるマリア・クリニック・・・ 「代理母」「親権」「地域医療の崩壊」等々色々の問題を提起している作品です。 読まれる際には、「ジーン・ワルツ」とともに読まれると面白いと思います。 それでは
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