『日本語は映像的である』 熊谷高幸 2011/10
著者は福井大学教育地域科学部教授。 日本語はどのような言語かという本。
日本語は、共同注視という働きに忠実に発展してきた、非常に映像的な言語であるというのがテーマ。
A:なかなかこないね B:あ、来た A:どこ? B:あそこ。 「あ、来た」は Here he comes となる。日本語の「あ、来た」は同じ立場で同じ方向を見ている二人の間でしか通じない。
日本語は指示詞(こ・そ・あ・ど)の種類が多く、対応関係がはっきりしている。一方英語の指示詞は限られており大雑把なものとなっている。日本語は立ち位置を重視している。
「りんごが欲しい」はI want an apple となり、日本語は対象中心、英語は行為者中心である。
夏目漱石はI love you の訳し方を弟子に問われ、「月がきれいですね」とでも訳しておけと答えたとか。「私は・あなたを・愛している」という主語・目的語・動詞を備えた文は日本語としては不自然である。
「は」と「が」は主語に関する助詞である。「は」は文の枠を示し、「が」は枠の中の要素を示すものと解説されている。「象は鼻が長い」だと、「象」が枠であり、「鼻」が要素(部分)である。
日本語の文の構成は、まず共同注視の枠を定め、次にその中の対象を選ぶという順序をとることが多い。「今朝、駅で山田さんを見かけたよ」は I saw Mr.Yamada at the station this morning となり、英語では中心から周辺へと向かうのが基本である。住所表示の違いも同じ構成である。
英語やドイツ語はSVOの語順、日本語はSOVの語順である。世界にある6千の言語のうち、SOVが40%、SVOが30%で、日本語は多数派なんだとか。
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