すーっと一本立ち上がる煙を眺めながら一息つく。この瞬間がたまらない。
もう止めよう、止めなければ、と思うのだけど、癖というのか身に染みついてしまっているというのか、どうしても止めることができない。
ライターを取り出してかちっと火をつけるときはもはや非日常で、なんともいえない幸福感に包まれる。やはり禁煙なんて私にはできないなぁと思う。
毎日というわけにもいかず、週に一回、我慢しても一か月毎にあの煙が見たくなる。
煙から炎が上がり、やがて大きな火へと成長する。
現場から離れた場所に移動して、私自身が点火した炎に包まれて燃え上がる建物を静かに眺めるこのひとときを、私は心行くまで堪能する。
了