「ブッデンブローク家の人びと」 トーマス・マン作 望月市恵訳 (岩波文庫)
ブッデンブローク商会を経営する一族の没落を、四代にわたって描いた大作です。
マンの処女長編で、完成度が高く、ノーベル賞受賞の理由に挙げられた作品です。
今年2013年6月に、岩波文庫から復刊されました。
カバーが良い味を出しています。初版は1969年。
1835年8月、ブッデンブローク家において、新居披露宴がおこなわれていました。
老夫妻、その息子夫妻、その孫たち、ほか親戚一同が、盛大に祝っていました。
あとから思えば、これがブッデンブローク家の最盛期でした。
老父が死ぬと、一家は衰退の道をゆるやかにたどり始めます。
革命による損失を受けながら、なんとか商会を維持した息子の世代。
戦争による損失を受けながら、自分の才覚で乗り切ろうとした孫の世代。
さらにその子供へと、四代にわたる壮大な物語です。
たんたんと、静かに物語は進行します。
ドストエフスキーのカラマーゾフのような、強烈な個性を発揮する人物はいません。
トルストイのアンナのような、強烈な印象を残す人物もいません。
しかしこの作品には、カラマーゾフやアンナに匹敵するインパクトがありました。
ゆっくりと、しかし確実に下り坂をくだる一族。
命運から逃れられない一族の悲哀が、作品全体からしみじみと感じられます。
読み終わるころには、自分もすっかり、ブッデンブローク家の一員でした。
いつまでもこの一族と一緒にいたいと感じました。
さて、この本の初版は1969年。そろそろ新訳がほしいです。
直訳に近くて一文が長く、時々不自然な倒置法があり、少し読みにくかったです。
また、最初は人名に戸惑いました。
「若主人」「ヨハン」「ジャン」「コンズル」、これらが、同一人物だったとは!
ちなみに、「ヨハン」は親から受け継いだ正式名称のようです。
「ジャン」は奥さんが本人を呼ぶときにだけ使われている名前です。愛称か。
そして「コンズル」がよく分からない。「一族の長」という肩書きでしょうか。
このへんの事情だけは、注釈がほしかったです。(辞書に載っていないので)
訳に難はあるものの、この作品の魅力は決して失われません。
次回、もう少しこの作品について書きたいです。
さいごに。(バレエはりきる)
娘のバレエは、2月に発表会があります。
そのため、小グループに分かれて、パートごとの振り付け練習に入りました。
娘はそのグループで一番の古株。そのためパートでは先頭で登場することに。
それが嬉しかったようで、娘は最近、バレエの練習ではりきっています。
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