私はいつも箱で移動する。家から会社へ行くときも、駅から駅へ行くときも、一階から上階へ上がるのも。
私は箱に乗って移動する。
箱には覗き窓があって、注意深く外の様子を眺めながら、ぶつからないように、怪我をしないように、箱は目的地に向かって移動する。
人はみんな箱に乗って移動する。
その箱は四角とは限らない。たいていは丸い箱……これを箱と呼ばせてもらえばだが……その下には四角に近い胴があって、脚と呼ばれる棒状のものを動かして移動する。
私たちはただ箱の中にいて、窓から覗きながら箱に指令を出して動かし、その行く末を見守っている。
人はみんな箱の中にいて、外の世界を眺めているのだ。
了