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第二十五話_short 夢オチ

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「結局、夢オチってことだよね」

 前作でも妄想系の内容だった映画の続編を友人とともに鑑賞したのだが、それなりに楽しめたもののやはり夢か現実かわからないようなストーリー展開だった。観覧席のそこここから、ああこういうのもう飽きたなというような声やため息が聞こえてきた。

 そもそもこれはそういう映画なのだし、面白かったのだからいいじゃないかと思う反面、夢オチ系というのはやはりなんだかなぁとも思ってしまう。

 映画館を出て、さぁなにか食べようかということになり、なんとなくバッグの中の財布を取り出そうとしてドキッとした。

 ない。財布がない。今朝出かける際にバッグの中に入っているのを確認したから、忘れてきたわけではない。

 落とした? それともスリ?

 こういうとき、心臓がズズーンと地面にまで垂れ下ったような感覚が訪れる。財布の中には昨日銀行から引き出したばかりの二万円ばかりが入っている。どうしよう。映画館で落としたのだろうか。

 わたしは友人を喫茶店で待たせておいて、映画館に戻って係員に訊ねてみたが、そういう落し物は届いてないという。映画館から駅までの道のりも歩いてみたが、わたしの財布はどこにもなかった。

 夢だ。これはきっと悪夢に違いない。わたしはまだ映画館の中にいて、あの不思議な映画を見ながら眠っているのに違いない。

 さっきからずっと、なんとなくけだるい感じやどんよりした感覚の鈍さがあり、どこか違和感がある。それは夢の中である兆候に思えた。

 夢なら覚めてくれ。そろそろ映画も終わる頃だ。眼を覚まさないと隣で見ている友人にまた笑われてしまう。

「あんたまた、映画見ながら鼾をかいてたね」

 そう、わたしは映画館で眠ってしまう癖があるのだ。早く目覚めなければ!

 しかし、夢から覚めることはなかった。というよりも、これは夢ではなく現実そのもので、財布を落としたことに変わりはなかった。

                                   了


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