「華子さん!?」
華子の姿が見えないことに気付いた萌が
周囲を見回すと、
「私は大丈夫……。今のでフォログラムが故障したみたい…」
ほっとした萌が、
「よかった。
でもモニタがこれじゃ、
外の様子が掴めないのです…」
と飛び散った破片を片付けながら言うと、
華子は、全方位モニタの代わりに
空中投影型のオプチカルモニターを
コクピット前面に何枚かポップアップさせた。
周囲の様子を映し出されると、
休憩でも取るつもりか、
ルーズベルトが葉巻に火をつけているところだった。
その背後の腰越あたりで、
何かチカチカと光るものが見える。
猛烈に切りかかる逸鬼が
ワシントンにいなされて、
肩で息をしているのがズームされた。
「--萌、このままじゃ、あの連中に勝てない。
これをすると、
依童(よりわら)体質になっちゃうらしいので、
あんまりやりたくないんだけど、
『憑依操縦システム』を使えば、
もっとダイレクトに蓮華王を操縦できる…。
そうすれば少しは勝機が…」
そのシステムが飛鳥ソフトウェアリングで開発していたのは
薫子に報告が上がっていたので萌もある程度は知っている。
鉄観音を自動操縦するための霊的OSが
操縦者に憑依することで
操縦者は思考するだけで鉄観音を動かすことができるというシステムだ。
ただそれを使った操縦者は、
霊的感覚が研ぎ済まされ、
近辺を漂っている霊的なものを引き寄せ易く
なってしまうケースがあると報告書に書いてあった。
実用までにはその副作用的な障害を取り除く筈だったが、
それが今時の反攻作戦を前に鉄観音は実装されていたらしい。
蓮華王のプログラムにもそれは引き継がれており、
障害を承知で華子が薦めてきたということは
それ以外の万策は尽きているということを意味している。
つづく
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