ど~も。ヴィトゲンシュタインです。 R. Newbrough著の「Sport and the Third Reich Vol.2」を読破しました。 先日の「Vol.1」はナチス・ドイツのスポーツ全般、1936年のベルリン・オリンピックから、 空軍、海軍、陸軍のスポーツ関連グッズ、そしてSA(突撃隊)などが強烈に紹介されました。 このVol.2に登場するのは、SSと警察にヒトラー・ユーゲント、 その他、洋書ならではのマニアにお楽しみのナチスの組織が次々に登場します。 最初は「NSKK」です。 これは、Nationalsozialistisches Kraftfahrkorps(国家社会主義自動車軍団)という 非常に仰々しい名前の組織ですが、1930年にSA(突撃隊)に誕生した 最初の自動車部隊(NSAK)が翌年には「Automobil」を「Kraftfahr」となって、 自動車とオートバイの技術を習得するという、自動車大好きヒトラー総統の肝いり軍団です。 軍団長のアドルフ・ヒューンラインはミュンヘン一揆にも参加して、 ヒトラーと同様、ランツベルク刑務所に収監された経歴を持ち、 この古参闘士が1942年に死去すると、ドイツ最高勲章である「ドイツ勲章」が追贈。 いわゆる「死の勲章」ですが、フリッツ・トート、ハイドリヒに次ぐ、3番目の受章者ですね。 タイヤに乗った鷲がデザインの「ドイツ・モータースポーツ章」も金銀銅各種紹介されていますし、 フォルクスワーゲンを含む、自動車関連切手も大きく取り上げています。 次は「DLV/NSFK」です。 DLVはDeutscher Luftsportverband(ドイツ航空スポーツ協会)の略であり、 1933年にSAのゲーリングとエルンスト・レームが責任者となって、 後のドイツ空軍パイロットらを養成した組織です。そして1937年には解体され、 NSFK、Nationalsozialistisches Fliegerkorps(国家社会主義航空軍団)となって、 少年パイロットなどの育成を行う準軍事組織に・・。 本書では、1943年まで軍団長を勤めたフリードリッヒ・クリスチャンセンと、 後任の軍団長、アルフレート・ケラーも写真付きで紹介します。 体育着は色鮮やかですね。オレンジがかったイエローというか。。 インシグニアも独特のデザインです。 航空機パイロット章(abzeichen für motorflugzeugführer)、各種・・。 そしてグライダーパイロット章(Segelfliegerabzeichen)、 バルーンパイロット章(Abzeichen für Freiballonführer)、といった、 見たことも聞いたこともないバッジを各種、取り揃えております。 いや~、これは凄い! とても勉強になります。 もうだいぶ良い感じになってしまいましたが、「SSと警察」の章がきました。 責任者として一応、ヒムラーとダリューゲを紹介しています。 そして出ました。SSマークの体育着。 白に黒かと思っていましたが、最初は褐色のナチス・カラーだったんですね。 さらにエリート部隊である「ライプシュタンダルテ」だけは独自のインシグニアで勝負。 スポーツ・セーターの実物まで出てきましたが、ニットにジッパーなんてモダンなデザインです。 「SSスポーツ章」が出た後は、警察関連グッズです。 こちらの体育着は想像通りですね。緑のポリツァイ・マーク。 バンバン行きましょう。お次は「ヒトラー・ユーゲント(HJ)」。 初代指導者フォン・シーラッハと2代目のアクスマンも写真付き。 そしてこの組織、ドイツ少女団「BDM(Bund Deutscher Mädel)」、 さらに男女の年少組織であるドイツ少年団「DJ (Deutsches Jungvolk)」と、 ドイツ幼女団「JM (Jungmädelgruppe)」も一緒くたで紹介します。 当初の体育着は男女とも、HJバッジのインシグニアです。 しかし男子だけは後にデザイン変更したようで、腕章と同じヤツですね。 また、Vol.1と同様にHJの海パン、それからBDMのいわゆるブルマーの実物も・・。 この路線が好きな人にはタマラン世界でしょう。ぜひ買ってみましょう。 個人的にはスイミング・キャップは可愛らしいと思いますけどね。 表紙の女の子3人組の写真が出てきましたが、雪山でスキーやってるのに薄着だなぁ・・。 まぁ、若さのなせる業ですか。。 このページでは「HJ スキー・リーダー章」が紹介されました。 まだまだ、長袖のHJハンドボールチームのユニフォームもカラーで・・。 彼らが来日した時にも、こんなのを着て日本チームと戦ったのかも知れません。 そして「HJ達成バッジ」各種に、金に輝くリーダー・バッジ、射撃バッジなど、 ドイツ少年団(DJ)のバッジも含めて紹介します。 子供はこういうの欲しさに頑張りますよね。 女子の場合にも「BDM」、「JM」と、このようなランク付けのバッジを右胸に付けるのです。 その他、競技会における1等賞記念グッズもタップリ・・。 一番スポーツをやってる世代ですし、人数も圧倒的に多いですから、 当時の写真も含め、この章に100ページと多くを割いていました。 雑誌の表紙では日本政府のプロパガンダ誌『写真週報』も・・。 続いては「DAF and RAD」。 DAFは、Deutsche Arbeitsfront(ドイツ労働戦線)、 RADは、Reichsarbeitsdienst (国家労働奉仕団)の略ですが、 RADはDAFの下部組織になりますね。 まずはロベルト・ライが指導者のDAF(ドイツ労働戦線)を紹介しますが、 奥さんのインゲさんが綺麗なだけに、ど~もこの人は好きになれません。。 このDAFはもともとは労働者組合を解体してできた巨大組織で、 戦時中、労働者の90%、2000万人が加入していたと言われており、 速い話が軍務に就いていない健康な男女のほとんどが加入していたことになります。 そして工場や職場でのスポーツが激励され、DAFのインシグニアの体育着が誕生。 赤いサッカー・ユニフォームが印象的ですが、格好いいかは微妙。。 また、「NSBO(Nationalsozialistische Betriebszellenorganisation)」という DAFの経営細胞組織の体育着インシグニアまで・・、激レアです。 コーチなどは特別なシールド型のインシグニアを付けますが、 体育教師になるとさらに特殊なピン・バッジが・・。 しかしコレは、パッと見、「旭日旗」っぽいですよね。 RAD(国家労働奉仕団)の総裁はコンスタンチン・ヒールルという人物です。 この人は初めて知りましたが、1945年2月に生きたまま「ドイツ勲章」を受章していました。 17歳から25歳の若者を対象とした半年間の労働奉仕活動ですから、 インシグニアもシャベルです。 女性の場合は、Reichsarbeitdienst der weiblichen Jugend (RAD/wJ)という 名称なだけに、シャベルはハーケンクロイツへと変更。 女性に肉体労働はやらせないぞ!・・というナチスらしいデザインの違いを感じます。 最後の章は「その他の組織」ですが、これがまた馬鹿に出来ません。 まずはライヒスバーン(Deutsche Reichsbahn)。 ドイツ帝国鉄道?? それからライヒスポスト(Deutsche Reichspost)。 ドイツ帝国郵便って訳すんですかね。。 そして右にはお楽しみ、ドイツ赤十字(DRK、Deutsches Rotes Kreuz)の登場。 まぁ、でも黒鷲&ハーケンクロイツに赤十字っていうのも、ちと怖いなぁ。 ぜひ優しく治療してください・・。 「Deutsche Jägerschaft(ドイツ・ハンティング協会)」の メダルやペナントなどの関連グッズまで出てきました。 ハンティングも当然、スポーツですが、仕切っているのも当然、狩猟長官のゲーリング。 いや~、コレはちょっと気になっていろいろと調べてみましたが、 本書には載ってないものの、緑の制服まであったり・・。 他にも「イエーガーマイスター・ゲーリング」のメダルも作られてたりして、 国家元帥は本業(空軍)を疎かにして、やりたい放題な感じですね。 最後の最後はオマケとしてか、戦時中の米軍、 陸軍や海兵隊のスポーツ・グッズを紹介しています。 1回目はダーっと読んで、2回目は英語とドイツ語名称を調べながらジックリ・・。 当時の白黒写真もそれなりに多い本書ですが、 マイナーなバッジ類は初めて知った物が多くて、非常に楽しめました。 また、このVol.2に出てきた組織についても大変勉強になりました。 さすがにこのままのボリュームで翻訳版は無理だと思いますが、 カラーの実物写真を中心にした300ページほどの写真集を期待してしまいます。 そんなことを書きつつ、「ヤークトパンター戦車隊戦闘記録集-第654重戦車駆逐大隊」を 遂に昨日、買ってしまいました(「あまちゃんメモリアルブック」と一緒に・・) 。
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