私にとって法医昆虫学の権威(フィクションの世界では、という意味ですが)といえばアメリカのテレビシリーズ「CSI科学捜査班」のグリッソムです。虫がうじゃうじゃ出てくるその第1話はあまりにも衝撃的で画面を正視できなかったことを覚えています。虫を犯罪解決の手がかりとするところの発想は日本ではあまり描かれてこなかったことを思うと、本書の目のつけどころはなかなか面白いと思いました。主人公?(果たして本書において主人公は彼女なのか?という疑問はありますが)は女性昆虫学者という点でCSIのグリッソムとは異なりますが、その特異なキャラクターという点では共通するものがあります。
まあ、読後感という意味では面白かったのですが、福島県の山奥の架空の村を舞台とし、その村に伝わる伝承をネタにする部分で、北森鴻の蓮杖那智シリーズ、臓器移植を巡る問題では海道尊のバチスタシリーズ、そして、過疎地を取り巻く事件の社会性という面で、事件を追う刑事二人のキャラでは相棒シリーズ(異論もありましょうが)を思い出させ、なかなか飽きのこないものでありました。
このシリーズ、なかなかショッキングな画を再現しなければならないという点で映像化は難しいでしょうが、シリーズ物としての展開は期待できそう(本作は法医昆虫学者シリーズの第2弾です)。
今後の作品に期待大です。
CSI: 科学捜査班 シーズン 11 コンプリートDVD-BOX 1
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2013/02/21
- メディア: DVD