『ブラック企業』 今野晴貴 2012/11
著者はNPO法人POSSE代表。 ブラック企業の問題を社会的に考える本。
著者は中央大学法学部在籍中にPOSSEを設立、労働相談を受けている。
「ブラック企業」という言葉の意味は、違法な労働条件で若者を働かせる企業。ブラック企業問題の被害の対象は主に正社員。09年に『ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない』という映画が上映され、10年以降に広くこの言葉が浸透するようになった。
ブラック企業の特徴のひとつが、大量採用・大量退職で「選別」を行っていること。もうひとつは人材の使い潰し。好景気になっても社員への待遇は変わらないという。その他に、経済合理性を欠いたパワハラやセクハラなど。
募集要綱の月収に「固定残業代」が含まれていることが横行している。本人は、「残業代が払われていない」「サービス残業か」と勘違いする。
逃げ続けてもブラック企業はなくならないので、企業の体質改善が必要だと述べる。マクロ的には正論だが、働いている本人からすると、さっさと逃げ出して関り合いたくないだろう。
日本の企業別労働組合は、正社員の日本型雇用を守るために、大量の非正規雇用を生み出すことを許してしまった。日本の労組にはブラック企業の発生を抑える力は無い。
労働市場に若者が大量にあふれていて、人材に「代わりがいる」ことがブラック企業の成立にとって必須である。
本来法を守る立場の社会保険労務士も人余りで、「ブラック」な稼業に手を染める者も現れている。
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